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[題詞]乞食者<詠>二首
[原文]伊刀古 名兄乃君 居々而 物尓伊行跡波 韓國乃 虎神乎 生取尓 八頭取持来 其
皮乎 多々弥尓刺 八重疊 平群乃山尓 四月 与五月間尓 藥猟 仕流時尓 足引乃 此片
山尓 二立 伊智比何本尓 梓弓 八多婆佐弥 比米加夫良 八多婆左弥 完待跡 吾居時尓
佐男鹿乃 来<立>嘆久 頓尓 吾可死 王尓 吾仕牟 吾角者 御笠乃<波>夜詩 吾耳者 御
墨坩 吾目良波 真墨乃鏡 吾爪者 御弓之弓波受 吾毛等者 御筆波夜斯 吾皮者 御箱皮
尓 吾完者 御奈麻須波夜志 吾伎毛母 御奈麻須波夜之 吾美義波 御塩乃波夜之 耆矣
奴 吾身一尓 七重花佐久 八重花生跡 白賞尼 <白賞尼>
[訓読]いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは 韓国の 虎といふ神を 生け捕り
に 八つ捕り持ち来 その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に 四月と 五月との間に 薬
猟 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓 八つ手挟み ひめ鏑
八つ手挟み 獣待つと 我が居る時に さを鹿の 来立ち嘆かく たちまちに 我れは死ぬ
べし 大君に 我れは仕へむ 我が角は み笠のはやし 我が耳は み墨の坩 我が目らは
ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭 我が毛らは み筆はやし 我が皮は み箱の皮に 我
が肉は み膾はやし 我が肝も み膾はやし 我がみげは み塩のはやし 老いたる奴 我
が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと 申しはやさね 申しはやさね
[仮名],いとこ,なせのきみ,をりをりて,ものにいゆくとは,からくにの,とらといふかみ
を,いけどりに,やつとりもちき,そのかはを,たたみにさし,やへたたみ,へぐりのやまに
,うづきと,さつきとのまに,くすりがり,つかふるときに,あしひきの,このかたやまに,ふ
たつたつ,いちひがもとに,あづさゆみ,やつたばさみ,ひめかぶら,やつたばさみ,ししま
つと,わがをるときに,さをしかの,きたちなげかく,たちまちに,われはしぬべし,おほき
みに,われはつかへむ,わがつのは,みかさのはやし,わがみみは,みすみつほ,わがめらは
,ますみのかがみ,わがつめは,みゆみのゆはず,わがけらは,みふみてはやし,わがかはは
,みはこのかはに,わがししは,みなますはやし,わがきもも,みなますはやし,わがみげは
,みしほのはやし,おいたるやつこ,あがみひとつに,ななへはなさく,やへはなさくと,ま
をしはやさね,まをしはやさね
[_]
[校異]詠歌 [西(右書)] → 詠 [類][紀][細] / 完 [類] 宍 / 立来 → 立 [尼] / 婆 → 波
[尼][類
][紀] / 完 [類] 宍 / 々々々 → 白賞尼 [尼][類][紀]
[_]
[KW],雑歌,作者:乞食者,寿歌,枕詞,歌謡