University of Virginia Library

(中臣宅守・狭野茅上娘子贈答歌)

3723

[題詞]中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌

[原文]安之比奇能 夜麻治古延牟等 須流君乎 許々呂尓毛知弖 夜須家久母奈之
[訓読]あしひきの山道越えむとする君を心に持ちて安けくもなし
[仮名],あしひきの,やまぢこえむと,するきみを,こころにもちて,やすけくもなし
[_]
[左注](右四首娘子臨別作歌)
[_]
[校異]弟 [細] 茅
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,枕詞,悲別,恋情,女歌,中臣宅守

3724

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]君我由久 道乃奈我弖乎 久里多々祢 也伎保呂煩散牟 安米能火毛我母
[訓読]君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも
[仮名],きみがゆく,みちのながてを,くりたたね,やきほろぼさむ,あめのひもがも
[_]
[左注](右四首娘子臨別作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,女歌,中臣宅守

3725

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和我世故之 氣太之麻可良<婆> 思漏多倍乃 蘇R乎布良左祢 見都追志努波牟
[訓読]我が背子しけだし罷らば白栲の袖を振らさね見つつ偲はむ
[仮名],わがせこし,けだしまからば,しろたへの,そでをふらさね,みつつしのはむ
[_]
[左注](右四首娘子臨別作歌)
[_]
[校異]波 → 婆 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,女歌,中臣宅守

3726

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]己能許呂波 古非都追母安良牟 多麻久之氣 安氣弖乎知欲利 須辨奈可流倍思
[訓読]このころは恋ひつつもあらむ玉櫛笥明けてをちよりすべなかるべし
[仮名],このころは,こひつつもあらむ,たまくしげ,あけてをちより,すべなかるべし
[_]
[左注]右四首娘子臨別作歌
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,枕詞,悲別,恋情,女歌,中臣宅守

3727

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]知里比治能 可受尓母安良奴 和礼由恵尓 於毛比和夫良牟 伊母我可奈思佐
[訓読]塵泥の数にもあらぬ我れゆゑに思ひわぶらむ妹がかなしさ
[仮名],ちりひぢの,かずにもあらぬ,われゆゑに,おもひわぶらむ,いもがかなしさ
[_]
[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子

3728

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安乎尓与之 奈良能於保知波 由<吉>余家杼 許能山道波 由伎安之可里家利
[訓読]あをによし奈良の大道は行きよけどこの山道は行き悪しかりけり
[仮名],あをによし,ならのおほぢは,ゆきよけど,このやまみちは,ゆきあしかりけり
[_]
[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)
[_]
[校異]伎 → 吉 [天][類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,贈答,配流,狭野弟上娘子

3729

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]宇流波之等 安我毛布伊毛乎 於毛比都追 由氣婆可母等奈 由伎安思可流良武
[訓読]愛しと我が思ふ妹を思ひつつ行けばかもとな行き悪しかるらむ
[仮名],うるはしと,あがもふいもを,おもひつつ,ゆけばかもとな,ゆきあしかるらむ
[_]
[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,贈答,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3730

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]加思故美等 能良受安里思乎 美故之治能 多武氣尓多知弖 伊毛我名能里都
[訓読]畏みと告らずありしをみ越道の手向けに立ちて妹が名告りつ
[仮名],かしこみと,のらずありしを,みこしぢの,たむけにたちて,いもがなのりつ
[_]
[左注]右四首中臣朝臣宅守上道作歌
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,配流,恋情,羈旅,手向け,悲別,狭野弟上娘 子

3731

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]於毛布恵尓 安布毛能奈良婆 之末思久毛 伊母我目可礼弖 安礼乎良米也母
[訓読]思ふゑに逢ふものならばしましくも妹が目離れて我れ居らめやも
[仮名],おもふゑに,あふものならば,しましくも,いもがめかれて,あれをらめやも
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,配流,恋情,羈旅,悲別,狭野弟上娘子

3732

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安可祢佐須 比流波毛能母比 奴婆多麻乃 欲流波須我良尓 祢能<未>之奈加由
[訓読]あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらに音のみし泣かゆ
[仮名],あかねさす,ひるはものもひ,ぬばたまの,よるはすがらに,ねのみしなかゆ
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]美 → 未 [天][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,枕詞,恋情,羈旅,配流,悲別,狭野弟上 娘子

3733

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和伎毛故我 可多美能許呂母 奈可里世婆 奈尓毛能母弖加 伊能知都我麻之
[訓読]我妹子が形見の衣なかりせば何物もてか命継がまし
[仮名],わぎもこが,かたみのころも,なかりせば,なにものもてか,いのちつがまし
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,配流,羈旅,孤独,悲別,狭野弟上娘子

3734

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]等保伎山 世伎毛故要伎奴 伊麻左良尓 安布倍伎与之能 奈伎我佐夫之佐 [一云 左必之佐]
[訓読]遠き山関も越え来ぬ今さらに逢ふべきよしのなきが寂しさ [一云 さびしさ]
[仮名],とほきやま,せきもこえきぬ,いまさらに,あふべきよしの,なきがさぶしさ,[さび しさ]
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,配流,恋情,異伝,贈答,悲別,狭野弟上娘子

3735

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]於毛波受母 麻許等安里衣牟也 左奴流欲能 伊米尓毛伊母我 美延射良奈久尓
[訓読]思はずもまことあり得むやさ寝る夜の夢にも妹が見えざらなくに
[仮名],おもはずも,まことありえむや,さぬるよの,いめにもいもが,みえざらなくに
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3736

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]等保久安礼婆 一日一夜毛 於<母>波受弖 安流良牟母能等 於毛保之賣須奈
[訓読]遠くあれば一日一夜も思はずてあるらむものと思ほしめすな
[仮名],とほくあれば,ひとひひとよも,おもはずて,あるらむものと,おもほしめすな
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]毛 → 母 [天][類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3737

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]比等余里波 伊毛曽母安之伎 故非毛奈久 安良末<思>毛能乎 於毛波之米都追
[訓読]人よりは妹ぞも悪しき恋もなくあらましものを思はしめつつ
[仮名],ひとよりは,いもぞもあしき,こひもなく,あらましものを,おもはしめつつ
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]之 → 思 [天][類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,配流,贈答,恋情,悲別,怨恨,狭野弟上娘子

3738

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]於毛比都追 奴礼婆可毛<等>奈 奴婆多麻能 比等欲毛意知受 伊米尓之見由流
[訓読]思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる
[仮名],おもひつつ,ぬればかもとな,ぬばたまの,ひとよもおちず,いめにしみゆる
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]登 → 等 [天][紀]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,枕詞,狭野弟上娘子

3739

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]可久婆可里 古非牟等可祢弖 之良末世婆 伊毛乎婆美受曽 安流倍久安里家留
[訓読]かくばかり恋ひむとかねて知らませば妹をば見ずぞあるべくありける
[仮名],かくばかり,こひむとかねて,しらませば,いもをばみずぞ,あるべくありける
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,後悔,狭野弟上娘子

3740

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安米都知能 可未奈伎毛能尓 安良婆許曽 安我毛布伊毛尓 安波受思仁世米
[訓読]天地の神なきものにあらばこそ我が思ふ妹に逢はず死にせめ
[仮名],あめつちの,かみなきものに,あらばこそ,あがもふいもに,あはずしにせめ
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子

3741

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]伊能知乎之 麻多久之安良婆 安里伎奴能 安里弖能知尓毛 安波射良米也母 [一 云 安里弖能乃知毛]
[訓読]命をし全くしあらばあり衣のありて後にも逢はざらめやも [一云 ありての後 も]
[仮名],いのちをし,またくしあらば,ありきぬの,ありてのちにも,あはざらめやも,[あり てののちも]
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,異伝,狭野弟上娘子

3742

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安波牟日乎 其日等之良受 等許也未尓 伊豆礼能日麻弖 安礼古非乎良牟
[訓読]逢はむ日をその日と知らず常闇にいづれの日まで我れ恋ひ居らむ
[仮名],あはむひを,そのひとしらず,とこやみに,いづれのひまで,あれこひをらむ
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3743

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多婢等伊倍婆 許等尓曽夜須伎 須久奈久毛 伊母尓戀都々 須敝奈家奈久尓
[訓読]旅といへば言にぞやすきすくなくも妹に恋ひつつすべなけなくに
[仮名],たびといへば,ことにぞやすき,すくなくも,いもにこひつつ,すべなけなくに
[_]
[左注](右十四首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3744

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和伎毛故尓 古布流尓安礼波 多麻吉波流 美自可伎伊能知毛 乎之家久母奈思
[訓読]我妹子に恋ふるに我れはたまきはる短き命も惜しけくもなし
[仮名],わぎもこに,こふるにあれは,たまきはる,みじかきいのちも,をしけくもなし
[_]
[左注]右十四首中臣朝臣宅守
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,枕詞,恋情,狭野弟上娘子

3745

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]伊能知安良婆 安布許登母安良牟 和我由恵尓 波太奈於毛比曽 伊能知多尓敝波
[訓読]命あらば逢ふこともあらむ我がゆゑにはだな思ひそ命だに経ば
[仮名],いのちあらば,あふこともあらむ,わがゆゑに,はだなおもひそ,いのちだにへば
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,悲別,慰撫,恋情,中臣宅守

3746

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]<比>等能宇々流 田者宇恵麻佐受 伊麻佐良尓 久尓和可礼之弖 安礼波伊可尓勢 武
[訓読]人の植うる田は植ゑまさず今さらに国別れして我れはいかにせむ
[仮名],ひとのううる,たはうゑまさず,いまさらに,くにわかれして,あれはいかにせむ
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]此 → 比 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3747

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和我屋度能 麻都能葉見都々 安礼麻多無 波夜可反里麻世 古非之奈奴刀尓
[訓読]我が宿の松の葉見つつ我れ待たむ早帰りませ恋ひ死なぬとに
[仮名],わがやどの,まつのはみつつ,あれまたむ,はやかへりませ,こひしなぬとに
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3748

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]比等久尓波 須美安之等曽伊布 須牟也氣久 波也可反里万世 古非之奈奴刀尓
[訓読]他国は住み悪しとぞ言ふ速けく早帰りませ恋ひ死なぬとに
[仮名],ひとくには,すみあしとぞいふ,すむやけく,はやかへりませ,こひしなぬとに
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3749

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]比等久尓々 伎美乎伊麻勢弖 伊<都><麻>弖可 安我故非乎良牟 等伎乃之良奈久
[訓読]他国に君をいませていつまでか我が恋ひ居らむ時の知らなく
[仮名],ひとくにに,きみをいませて,いつまでか,あがこひをらむ,ときのしらなく
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]豆 → 都 [類][紀][細] / 摩 → 麻 [類][紀][温][細]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3750

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安米都知乃 曽許比能宇良尓 安我其等久 伎美尓故布良牟 比等波左祢安良自
[訓読]天地の底ひのうらに我がごとく君に恋ふらむ人はさねあらじ
[仮名],あめつちの,そこひのうらに,あがごとく,きみにこふらむ,ひとはさねあらじ
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3751

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]之呂多倍能 安我之多其呂母 宇思奈波受 毛弖礼和我世故 多太尓安布麻弖尓
[訓読]白栲の我が下衣失はず持てれ我が背子直に逢ふまでに
[仮名],しろたへの,あがしたごろも,うしなはず,もてれわがせこ,ただにあふまでに
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,枕詞,中臣宅守

3752

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]波流乃日能 宇良我奈之伎尓 於久礼為弖 君尓古非都々 宇都之家米也母
[訓読]春の日のうら悲しきに後れ居て君に恋ひつつうつしけめやも
[仮名],はるのひの,うらがなしきに,おくれゐて,きみにこひつつ,うつしけめやも
[_]
[左注](右九首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3753

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安波牟日能 可多美尓世与等 多和也女能 於毛比美太礼弖 奴敝流許呂母曽
[訓読]逢はむ日の形見にせよとたわや女の思ひ乱れて縫へる衣ぞ
[仮名],あはむひの,かたみにせよと,たわやめの,おもひみだれて,ぬへるころもぞ
[_]
[左注]右九首娘子
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3754

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]過所奈之尓 世伎等婢古由流 保等登藝須 多我子尓毛 夜麻受可欲波牟
[訓読]過所なしに関飛び越ゆる霍公鳥多我子尓毛止まず通はむ
[仮名],くゎそなしに,せきとびこゆる,ほととぎす,*******,やまずかよはむ
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,難訓,動物,狭野弟上娘子

3755

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]宇流波之等 安我毛布伊毛乎 山川乎 奈可尓敝奈里弖 夜須家久毛奈之
[訓読]愛しと我が思ふ妹を山川を中にへなりて安けくもなし
[仮名],うるはしと,あがもふいもを,やまかはを,なかにへなりて,やすけくもなし
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3756

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]牟可比為弖 一日毛於知受 見之可杼母 伊等波奴伊毛乎 都奇和多流麻弖
[訓読]向ひ居て一日もおちず見しかども厭はぬ妹を月わたるまで
[仮名],むかひゐて,ひとひもおちず,みしかども,いとはぬいもを,つきわたるまで
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3757

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安我<未>許曽 世伎夜麻<故>要弖 許己尓安良米 許己呂波伊毛尓 与里尓之母能 乎
[訓読]我が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に寄りにしものを
[仮名],あがみこそ,せきやまこえて,ここにあらめ,こころはいもに,よりにしものを
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]末 → 未 [類][紀][細] / 許 → 故 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3758

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]佐須太氣能 大宮人者 伊麻毛可母 比等奈夫理能<未> 許能美多流良武 [一云 伊麻左倍也]
[訓読]さす竹の大宮人は今もかも人なぶりのみ好みたるらむ [一云 今さへや]
[仮名],さすだけの,おほみやひとは,いまもかも,ひとなぶりのみ,このみたるらむ,[いま さへや]
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]美 → 未 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,枕詞,贈答,羈旅,配流,怨恨,異伝,狭野弟上娘子

3759

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多知可敝里 奈氣杼毛安礼波 之流思奈美 於毛比和夫礼弖 奴流欲之曽於保伎
[訓読]たちかへり泣けども我れは験なみ思ひわぶれて寝る夜しぞ多き
[仮名],たちかへり,なけどもあれは,しるしなみ,おもひわぶれて,ぬるよしぞおほき
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,孤独,狭野弟上娘子

3760

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]左奴流欲波 於保久安礼杼母 毛能毛波受 夜須久奴流欲波 佐祢奈伎母能乎
[訓読]さ寝る夜は多くあれども物思はず安く寝る夜はさねなきものを
[仮名],さぬるよは,おほくあれども,ものもはず,やすくぬるよは,さねなきものを
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]母毛 [紀][細](塙) 毛母
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲嘆,悲別,狭野弟上娘子

3761

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈<里>伎尓家良之 須恵之多祢可良
[訓読]世の中の常のことわりかくさまになり来にけらしすゑし種から
[仮名],よのなかの,つねのことわり,かくさまに,なりきにけらし,すゑしたねから
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]利 → 里 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲嘆,自覚,狭野弟上娘子

3762

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之
[訓読]我妹子に逢坂山を越えて来て泣きつつ居れど逢ふよしもなし
[仮名],わぎもこに,あふさかやまを,こえてきて,なきつつをれど,あふよしもなし
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,地名,滋賀県,大津市 ,悲別,悲嘆,狭野弟上娘子

3763

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多婢等伊倍婆 許<登>尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也 母
[訓読]旅と言へば言にぞやすきすべもなく苦しき旅も言にまさめやも
[仮名],たびといへば,ことにぞやすき,すべもなく,くるしきたびも,ことにまさめやも
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]等 → 登 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,自覚,悲嘆,狭野弟上娘子

3764

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母
[訓読]山川を中にへなりて遠くとも心を近く思ほせ我妹
[仮名],やまかはを,なかにへなりて,とほくとも,こころをちかく,おもほせわぎも
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3765

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈
[訓読]まそ鏡懸けて偲へとまつり出す形見のものを人に示すな
[仮名],まそかがみ,かけてしぬへと,まつりだす,かたみのものを,ひとにしめすな
[_]
[左注](右十三首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,狭野弟上娘子

3766

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]宇流波之等 於毛比之於毛<波婆> 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世
[訓読]愛しと思ひし思はば下紐に結ひつけ持ちてやまず偲はせ
[仮名],うるはしと,おもひしおもはば,したびもに,ゆひつけもちて,やまずしのはせ
[_]
[左注]右十三首中臣朝臣宅守
[_]
[校異]婆波 → 波婆 [代匠記精撰本]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子

3767

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓
[訓読]魂は朝夕にたまふれど我が胸痛し恋の繁きに
[仮名],たましひは,あしたゆふへに,たまふれど,あがむねいたし,こひのしげきに
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

3768

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能<未>之都々 <祢>能<未>之曽奈久
[訓読]このころは君を思ふとすべもなき恋のみしつつ音のみしぞ泣く
[仮名],このころは,きみをおもふと,すべもなき,こひのみしつつ,ねのみしぞなく
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]末 → 未 [紀][温][矢] / 弥 → 祢 [紀][細][温] / 末 → 未 [紀][温][矢]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守

3769

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉
[訓読]ぬばたまの夜見し君を明くる朝逢はずまにして今ぞ悔しき
[仮名],ぬばたまの,よるみしきみを,あくるあした,あはずまにして,いまぞくやしき
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,枕詞,後悔,恋情,悲別,女歌,中臣宅守

3770

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武
[訓読]味真野に宿れる君が帰り来む時の迎へをいつとか待たむ
[仮名],あぢまのに,やどれるきみが,かへりこむ,ときのむかへを,いつとかまたむ
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,地名,福井県,武生市,悲別,恋情,女歌,中臣 宅守

3771

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]宮人能 夜須伊毛祢受弖 家布々々等 麻都良武毛能乎 美要奴君可聞
[訓読]宮人の安寐も寝ずて今日今日と待つらむものを見えぬ君かも
[仮名],みやひとの,やすいもねずて,けふけふと,まつらむものを,みえぬきみかも
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

3772

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]可敝里家流 比等伎多礼里等 伊比之可婆 保等保登之尓吉 君香登於毛比弖
[訓読]帰りける人来れりと言ひしかばほとほと死にき君かと思ひて
[仮名],かへりける,ひときたれりと,いひしかば,ほとほとしにき,きみかとおもひて
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

3773

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]君我牟多 由可麻之毛能乎 於奈自許等 於久礼弖乎礼杼 与伎許等毛奈之
[訓読]君が共行かましものを同じこと後れて居れどよきこともなし
[仮名],きみがむた,ゆかましものを,おなじこと,おくれてをれど,よきこともなし
[_]
[左注](右八首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守

3774

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和我世故我 可反里吉麻佐武 等伎能多米 伊能知能己佐牟 和須礼多麻布奈
[訓読]我が背子が帰り来まさむ時のため命残さむ忘れたまふな
[仮名],わがせこが,かへりきまさむ,ときのため,いのちのこさむ,わすれたまふな
[_]
[左注]右八首娘子
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,期待,大赦,女歌,中臣宅守

3775

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安良多麻能 等之能乎奈我久 安波射礼杼 家之伎己許呂乎 安我毛波奈久尓
[訓読]あらたまの年の緒長く逢はざれど異しき心を我が思はなくに
[仮名],あらたまの,としのをながく,あはざれど,けしきこころを,あがもはなくに
[_]
[左注](右二首中臣朝臣宅守)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,恋情,悲別,女歌,心変わり,狭野弟上娘子

3776

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]家布毛可母 美也故奈里世婆 見麻久保里 尓之能御馬屋乃 刀尓多弖良麻之
[訓読]今日もかも都なりせば見まく欲り西の御馬屋の外に立てらまし
[仮名],けふもかも,みやこなりせば,みまくほり,にしのみまやの,とにたてらまし
[_]
[左注]右二首中臣朝臣宅守
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3777

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]伎能布家布 伎美尓安波受弖 須流須敝能 多度伎乎之良尓 祢能未之曽奈久
[訓読]昨日今日君に逢はずてするすべのたどきを知らに音のみしぞ泣く
[仮名],きのふけふ,きみにあはずて,するすべの,たどきをしらに,ねのみしぞなく
[_]
[左注](右二首娘子)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,配流,恋情,悲別,中臣宅守

3778

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]之路多<倍>乃 阿我許呂毛弖乎 登里母知弖 伊波敝和我勢古 多太尓安布末R尓
[訓読]白栲の我が衣手を取り持ちて斎へ我が背子直に逢ふまでに
[仮名],しろたへの,あがころもでを,とりもちて,いはへわがせこ,ただにあふまでに
[_]
[左注]右二首娘子
[_]
[校異]信 → 倍 [西(訂正)][類][紀][細]
[_]
[KW],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,枕詞,恋情,期待,女歌,中臣宅守

3779

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]和我夜度乃 波奈多知<婆>奈波 伊多都良尓 知利可須具良牟 見流比等奈思尓
[訓読]我が宿の花橘はいたづらに散りか過ぐらむ見る人なしに
[仮名],わがやどの,はなたちばなは,いたづらに,ちりかすぐらむ,みるひとなしに
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]波 → 婆 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,植物,譬喩,恋情,悲別,狭野弟上娘子

3780

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]古非之奈婆 古非毛之祢等也 保等登藝須 毛能毛布等伎尓 伎奈吉等余牟流
[訓読]恋ひ死なば恋ひも死ねとや霍公鳥物思ふ時に来鳴き響むる
[仮名],こひしなば,こひもしねとや,ほととぎす,ものもふときに,きなきとよむる
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,狭野弟上娘子

3781

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多婢尓之弖 毛能毛布等吉尓 保等登藝須 毛等奈那難吉曽 安我古非麻左流
[訓読]旅にして物思ふ時に霍公鳥もとなな鳴きそ我が恋まさる
[仮名],たびにして,ものもふときに,ほととぎす,もとなななきそ,あがこひまさる
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,羈旅,配流,恋情,怨恨,狭野弟上娘子

3782

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]安麻其毛理 毛能母布等伎尓 保等登藝須 和我須武佐刀尓 伎奈伎等余母須
[訓読]雨隠り物思ふ時に霍公鳥我が住む里に来鳴き響もす
[仮名],あまごもり,ものもふときに,ほととぎす,わがすむさとに,きなきとよもす
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子

3783

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]多婢尓之弖 伊毛尓古布礼婆 保登等伎須 和我須武佐刀尓 許<欲>奈伎和多流
[訓読]旅にして妹に恋ふれば霍公鳥我が住む里にこよ鳴き渡る
[仮名],たびにして,いもにこふれば,ほととぎす,わがすむさとに,こよなきわたる
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]余 → 欲 [類][細]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子

3784

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可
[訓読]心なき鳥にぞありける霍公鳥物思ふ時に鳴くべきものか
[仮名],こころなき,とりにぞありける,ほととぎす,ものもふときに,なくべきものか
[_]
[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,怨恨,狭野弟上娘子

3785

[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)

[原文]保登等藝須 安比太之麻思於家 奈我奈氣婆 安我毛布許己呂 伊多母須敝奈之
[訓読]霍公鳥間しまし置け汝が鳴けば我が思ふ心いたもすべなし
[仮名],ほととぎす,あひだしましおけ,ながなけば,あがもふこころ,いたもすべなし
[_]
[左注]右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌
[_]
[校異]
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[KW],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子