University of Virginia Library

3240

[題詞]

[原文]王 命恐 雖見不飽 楢山越而 真木積 泉河乃 速瀬 <竿>刺渡 千速振 氏渡乃 多 企都瀬乎 見乍渡而 近江道乃 相坂山丹 手向為 吾越徃者 樂浪乃 志我能韓埼 幸有者 又反見 道前 八十阿毎 嗟乍 吾過徃者 弥遠丹 里離来奴 弥高二 山<文>越来奴 劔刀 鞘従拔出而 伊香胡山 如何吾将為 徃邊不知而
[訓読]大君の 命畏み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木積む 泉の川の 早き瀬を 棹 さし渡り ちはやぶる 宇治の渡りの たきつ瀬を 見つつ渡りて 近江道の 逢坂山に 手向けして 我が越え行けば 楽浪の 志賀の唐崎 幸くあらば またかへり見む 道の隈 八十隈ごとに 嘆きつつ 我が過ぎ行けば いや遠に 里離り来ぬ いや高に 山も越え来 ぬ 剣太刀 鞘ゆ抜き出でて 伊香胡山 いかにか我がせむ ゆくへ知らずて
[仮名],おほきみの,みことかしこみ,みれどあかぬ,ならやまこえて,まきつむ,いづみの かはの,はやきせを,さをさしわたり,ちはやぶる,うぢのわたりの,たきつせを,みつつわ たりて,あふみぢの,あふさかやまに,たむけして,わがこえゆけば,ささなみの,しがのか らさき,さきくあらば,またかへりみむ,みちのくま,やそくまごとに,なげきつつ,わがす ぎゆけば,いやとほに,さとさかりきぬ,いやたかに,やまもこえきぬ,つるぎたち,さやゆ ぬきいでて,いかごやま,いかにかわがせむ,ゆくへしらずて
[_]
[左注](右二首)
[_]
[元][天][紀] / 父 → 文 [西(訂正)][元][天][細]
[_]
道行き,奈良,京都,滋賀,序詞,羈旅,旅愁