万葉集 (Manyoshu) | ||
問答歌
3211
[題詞]問答<歌>
[原文]玉緒乃 <徙>心哉 八十梶懸 水手出牟船尓 後而将居
[訓読]玉の緒の現し心や八十楫懸け漕ぎ出む船に後れて居らむ
[仮名],たまのをの,うつしこころや,やそかかけ,こぎでむふねに,おくれてをらむ
3212
[題詞](問答歌)
[原文]八十梶懸 嶋隠去者 吾妹兒之 留登将振 袖不所見可聞
[訓読]八十楫懸け島隠りなば我妹子が留まれと振らむ袖見えじかも
[仮名],やそかかけ,しまがくりなば,わぎもこが,とまれとふらむ,そでみえじかも
3213
[題詞](問答歌)
[原文]十月 鍾礼乃雨丹 <沾>乍哉 君之行疑 宿可借疑
[訓読]十月しぐれの雨に濡れつつか君が行くらむ宿か借るらむ
[仮名],かむなづき,しぐれのあめに,ぬれつつか,きみがゆくらむ,やどかかるらむ
3214
[題詞](問答歌)
[原文]十月 <雨>間毛不置 零尓西者 誰里<之> 宿可借益
[訓読]十月雨間も置かず降りにせばいづれの里の宿か借らまし
[仮名],かむなづき,あままもおかず,ふりにせば,いづれのさとの,やどかからまし
3215
[題詞](問答歌)
[原文]白妙乃 袖之別乎 難見為而 荒津之濱 屋取為鴨
[訓読]白栲の袖の別れを難みして荒津の浜に宿りするかも
[仮名],しろたへの,そでのわかれを,かたみして,あらつのはまに,やどりするかも
3216
[題詞](問答歌)
[原文]草枕 羈行君乎 荒津左右 送来 <飽>不足社
[訓読]草枕旅行く君を荒津まで送りぞ来ぬる飽き足らねこそ
[仮名],くさまくら,たびゆくきみを,あらつまで,おくりぞきぬる,あきだらねこそ
3217
[題詞](問答歌)
[原文]荒津海 吾幣奉 将齊 早<還>座 面變不為
[訓読]荒津の海我れ幣奉り斎ひてむ早帰りませ面変りせず
[仮名],あらつのうみ,われぬさまつり,いはひてむ,はやかへりませ,おもがはりせず
3218
[題詞](問答歌)
[本文]<旦>々 筑紫乃方乎 出見乍 哭耳吾泣 痛毛為便無三
[訓読]朝な朝な筑紫の方を出で見つつ音のみぞ我が泣くいたもすべなみ
[仮名],あさなさな,つくしのかたを,いでみつつ,ねのみぞあがなく,いたもすべなみ
3219
[題詞](問答歌)
[原文]豊國乃 聞之長濱 去晩 日之昏去者 妹食序念
[訓読]豊国の企救の長浜行き暮らし日の暮れゆけば妹をしぞ思ふ
[仮名],とよくにの,きくのながはま,ゆきくらし,ひのくれゆけば,いもをしぞおもふ
3220
[題詞](問答歌)
[原文]豊國能 聞乃高濱 高々二 君待夜等者 左夜深来
[訓読]豊国の企救の高浜高々に君待つ夜らはさ夜更けにけり
[仮名],とよくにの,きくのたかはま,たかたかに,きみまつよらは,さよふけにけり
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