University of Virginia Library

羇旅發思

3127

[題詞]羇旅發思

[原文]度會 大川邊 若歴木 吾久在者 妹戀鴨
[訓読]度会の大川の辺の若久木我が久ならば妹恋ひむかも
[仮名],わたらひの,おほかはのへの,わかひさぎ,わがひさならば,いもこひむかも
[_]
[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,三重県,伊勢,植物,序詞,恋愛,羈旅

3128

[題詞](羇旅發思)

[原文]吾妹子 夢見来 倭路 度瀬別 手向吾為
[訓読]我妹子を夢に見え来と大和道の渡り瀬ごとに手向けぞ我がする
[仮名],わぎもこを,いめにみえこと,やまとぢの,わたりぜごとに,たむけぞわがする
[_]
[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,恋情,羈旅

3129

[題詞](羇旅發思)

[原文]櫻花 開哉散 <及>見 誰此 所見散行
[訓読]桜花咲きかも散ると見るまでに誰れかもここに見えて散り行く
[仮名],さくらばな,さきかもちると,みるまでに,たれかもここに,みえてちりゆく
[_]
[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)
[_]
[校異]乃 → 及 [元][紀][細]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,羈旅

3130

[題詞](羇旅發思)

[原文]豊洲 聞濱松 心<哀> 何妹 相云始
[訓読]豊国の企救の浜松ねもころに何しか妹に相言ひそめけむ
[仮名],とよくにの,きくのはままつ,ねもころに,なにしかいもに,あひいひそめけむ
[_]
[左注]右四首柿本朝臣人麻呂歌集出
[_]
[校異]裳 → 哀 [元][類]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,福岡,北九州市,地名,序詞,恋情,羈旅

3131

[題詞](羇旅發思)

[原文]月易而 君乎婆見登 念鴨 日毛不易為而 戀之重
[訓読]月変へて君をば見むと思へかも日も変へずして恋の繁けむ
[仮名],つきかへて,きみをばみむと,おもへかも,ひもかへずして,こひのしげけむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],恋情,羈旅

3132

[題詞](羇旅發思)

[原文]莫去跡 變毛来哉常 顧尓 雖徃不歸 道之長手矣
[訓読]な行きそと帰りも来やとかへり見に行けど帰らず道の長手を
[仮名],なゆきそと,かへりもくやと,かへりみに,ゆけどかへらず,みちのながてを
[_]
[左注]
[_]
[校異]歸 [元] 満
[_]
[KW],恋情,羈旅

3133

[題詞](羇旅發思)

[原文]去家而 妹乎念出 灼然 人之應知 <歎>将為鴨
[訓読]旅にして妹を思ひ出でいちしろく人の知るべく嘆きせむかも
[仮名],たびにして,いもをおもひいで,いちしろく,ひとのしるべく,なげきせむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]欲 → 歎 [西(訂正右書)][元][紀][温]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷

3134

[題詞](羇旅發思)

[原文]里離 遠有莫國 草枕 旅登之思者 尚戀来
[訓読]里離り遠くあらなくに草枕旅とし思へばなほ恋ひにけり
[仮名],さとさかり,とほくあらなくに,くさまくら,たびとしおもへば,なほこひにけり
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷

3135

[題詞](羇旅發思)

[原文]近有者 名耳毛聞而 名種目津 今夜従戀乃 益々南
[訓読]近くあれば名のみも聞きて慰めつ今夜ゆ恋のいやまさりなむ
[仮名],ちかくあれば,なのみもききて,なぐさめつ,こよひゆこひの,いやまさりなむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷,うわさ

3136

[題詞](羇旅發思)

[原文]客在而 戀者辛苦 何時毛 京行而 君之目乎将見
[訓読]旅にありて恋ふれば苦しいつしかも都に行きて君が目を見む
[仮名],たびにありて,こふればくるし,いつしかも,みやこにゆきて,きみがめをみむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷

3137

[題詞](羇旅發思)

[原文]遠有者 光儀者不所見 如常 妹之咲者 面影為而
[訓読]遠くあれば姿は見えず常のごと妹が笑まひは面影にして
[仮名],とほくあれば,すがたはみえず,つねのごと,いもがゑまひは,おもかげにして
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,望郷,恋情

3138

[題詞](羇旅發思)

[原文]年毛不歴 反来甞跡 朝影尓 将待妹之 面影所見
[訓読]年も経ず帰り来なむと朝影に待つらむ妹し面影に見ゆ
[仮名],としもへず,かへりこなむと,あさかげに,まつらむいもし,おもかげにみゆ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷

3139

[題詞](羇旅發思)

[原文]玉桙之 道尓出立 別来之 日従于念 忘時無
[訓読]玉桙の道に出で立ち別れ来し日より思ふに忘る時なし
[仮名],たまほこの,みちにいでたち,わかれこし,ひよりおもふに,わするときなし
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,恋情,望郷

3140

[題詞](羇旅發思)

[原文]波之寸八師 志賀在戀尓毛 有之鴨 君所遺而 戀敷念者
[訓読]はしきやししかある恋にもありしかも君に後れて恋しき思へば
[仮名],はしきやし,しかあるこひに,ありしかも,きみにおくれて,こほしきおもへば
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,望郷,恋情,女歌,遊行女婦

3141

[題詞](羇旅發思)

[原文]草枕 客之悲 有苗尓 妹乎相見而 後将戀可聞
[訓読]草枕旅の悲しくあるなへに妹を相見て後恋ひむかも
[仮名],くさまくら,たびのかなしく,あるなへに,いもをあひみて,のちこひむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,枕詞,恋情,遊行女婦

3142

[題詞](羇旅發思)

[原文]國遠 直不相 夢谷 吾尓所見社 相日左右二
[訓読]国遠み直には逢はず夢にだに我れに見えこそ逢はむ日までに
[仮名],くにとほみ,ただにはあはず,いめにだに,われにみえこそ,あはむひまでに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,望郷,恋情

3143

[題詞](羇旅發思)

[原文]如是将戀 物跡知者 吾妹兒尓 言問麻思乎 今之悔毛
[訓読]かく恋ひむものと知りせば我妹子に言問はましを今し悔しも
[仮名],かくこひむ,ものとしりせば,わぎもこに,こととはましを,いましくやしも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],恋情,羈旅,望郷

3144

[題詞](羇旅發思)

[原文]客夜之 久成者 左丹頬合 紐開不離 戀流比日
[訓読]旅の夜の久しくなればさ丹つらふ紐解き放けず恋ふるこのころ
[仮名],たびのよの,ひさしくなれば,さにつらふ,ひもときさけず,こふるこのころ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,枕詞,恋情,望郷

3145

[題詞](羇旅發思)

[原文]吾妹兒之 阿<乎>偲良志 草枕 旅之丸寐尓 下紐解
[訓読]我妹子し我を偲ふらし草枕旅のまろ寝に下紐解けぬ
[仮名],わぎもこし,あをしのふらし,くさまくら,たびのまろねに,したびもとけぬ
[_]
[左注]
[_]
[校異]手 → 乎 [西(訂正右書)][元][類][紀]
[_]
[KW],枕詞,恋情,望郷,羈旅

3146

[題詞](羇旅發思)

[原文]草枕 旅之衣 紐解 所念鴨 此年比者
[訓読]草枕旅の衣の紐解けて思ほゆるかもこの年ころは
[仮名],くさまくら,たびのころもの,ひもとけて,おもほゆるかも,このとしころは
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,恋情,望郷,羈旅

3147

[題詞](羇旅發思)

[原文]草枕 客之紐解 家之妹志 吾乎待不得而 歎良霜
[訓読]草枕旅の紐解く家の妹し我を待ちかねて嘆かふらしも
[仮名],くさまくら,たびのひもとく,いへのいもし,わをまちかねて,なげかふらしも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,枕詞,望郷,恋情

3148

[題詞](羇旅發思)

[原文]玉釼 巻寝志妹乎 月毛不經 置而八将越 此山岫
[訓読]玉釧まき寝し妹を月も経ず置きてや越えむこの山の崎
[仮名],たまくしろ,まきねしいもを,つきもへず,おきてやこえむ,このやまのさき
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,恋情,望郷,臨場表現

3149

[題詞](羇旅發思)

[原文]梓弓 末者不知杼 愛美 君尓副而 山道越来奴
[訓読]梓弓末は知らねど愛しみ君にたぐひて山道越え来ぬ
[仮名],あづさゆみ,すゑはしらねど,うるはしみ,きみにたぐひて,やまぢこえきぬ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,女歌,遊行女婦

3150

[題詞](羇旅發思)

[原文]霞立 春長日乎 奥香無 不知山道乎 戀乍可将来
[訓読]霞立つ春の長日を奥処なく知らぬ山道を恋ひつつか来む
[仮名],かすみたつ,はるのながひを,おくかなく,しらぬやまぢを,こひつつかこむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,恋情

3151

[題詞](羇旅發思)

[原文]外耳 君乎相見而 木綿牒 手向乃山乎 明日香越将去
[訓読]外のみに君を相見て木綿畳手向けの山を明日か越え去なむ
[仮名],よそのみに,きみをあひみて,ゆふたたみ,たむけのやまを,あすかこえいなむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,遊行女婦,恋情

3152

[題詞](羇旅發思)

[原文]玉勝間 安倍嶋山之 暮露尓 旅宿得為也 長此夜乎
[訓読]玉かつま安倍島山の夕露に旅寝えせめや長きこの夜を
[仮名],たまかつま,あへしまやまの,ゆふつゆに,たびねえせめや,ながきこのよを
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,地名,孤独,羈旅

3153

[題詞](羇旅發思)

[原文]三雪零 越乃大山 行過而 何日可 我里乎将見
[訓読]み雪降る越の大山行き過ぎていづれの日にか我が里を見む
[仮名],みゆきふる,こしのおほやま,ゆきすぎて,いづれのひにか,わがさとをみむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,北陸,石川,富山,恋情,望郷,羈旅

3154

[題詞](羇旅發思)

[原文]乞吾駒 早去欲 亦打山 将待妹乎 去而速見牟
[訓読]いで我が駒早く行きこそ真土山待つらむ妹を行きて早見む
[仮名],いであがこま,はやくゆきこそ,まつちやま,まつらむいもを,ゆきてはやみむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,和歌山,望郷,羈旅,恋情

3155

[題詞](羇旅發思)

[原文]悪木山 木<末>悉 明日従者 靡有社 妹之當将見
[訓読]悪木山木末ことごと明日よりは靡きてありこそ妹があたり見む
[仮名],あしきやま,こぬれことごと,あすよりは,なびきてありこそ,いもがあたりみむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]未 → 末 [元][類][古][紀]
[_]
[KW],地名,福岡県,恋情,望郷,羈旅

3156

[題詞](羇旅發思)

[原文]鈴鹿河 八十瀬渡而 誰故加 夜越尓将越 妻毛不在君
[訓読]鈴鹿川八十瀬渡りて誰がゆゑか夜越えに越えむ妻もあらなくに
[仮名],すずかがは,やそせわたりて,たがゆゑか,よごえにこえむ,つまもあらなくに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,三重県,羈旅,恋愛

3157

[題詞](羇旅發思)

[原文]吾妹兒尓 又毛相海之 安河 安寐毛不宿尓 戀度鴨
[訓読]我妹子にまたも近江の安の川安寐も寝ずに恋ひわたるかも
[仮名],わぎもこに,またもあふみの,やすのかは,やすいもねずに,こひわたるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,滋賀,序詞,恋情,望郷

3158

[題詞](羇旅發思)

[原文]客尓有而 物乎曽念 白浪乃 邊毛奥毛 依者無尓
[訓読]旅にありてものをぞ思ふ白波の辺にも沖にも寄るとはなしに
[仮名],たびにありて,ものをぞおもふ,しらなみの,へにもおきにも,よるとはなしに
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,遊行女婦,鬱屈,恋情

3159

[題詞](羇旅發思)

[本文]<湖>轉尓 満来塩能 弥益二 戀者雖剰 不所忘鴨
[訓読]港廻に満ち来る潮のいや増しに恋はまされど忘らえぬかも
[仮名],みなとみに,みちくるしほの,いやましに,こひはまされど,わすらえぬかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]潮 →湖 [元][古][紀]
[_]
[KW],羈旅,遊行女婦,序詞,恋情

3160

[題詞](羇旅發思)

[原文]奥浪 邊浪之来依 貞浦乃 此左太過而 後将戀鴨
[訓読]沖つ波辺波の来寄る佐太の浦のこのさだ過ぎて後恋ひむかも
[仮名],おきつなみ,へなみのきよる,さだのうらの,このさだすぎて,のちこひむかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,序詞,遊行女婦,恋情,羈旅

3161

[題詞](羇旅發思)

[原文]在千方 在名草目而 行目友 家有妹伊 将欝悒
[訓読]在千潟あり慰めて行かめども家なる妹いいふかしみせむ
[仮名],ありちがた,ありなぐさめて,ゆかめども,いへなるいもい,いふかしみせむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,枕詞,羈旅,遊行女婦

3162

[題詞](羇旅發思)

[原文]水咫衝石 心盡而 念鴨 此間毛本名 夢西所見
[訓読]みをつくし心尽して思へかもここにももとな夢にし見ゆる
[仮名],みをつくし,こころつくして,おもへかも,ここにももとな,いめにしみゆる
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,恋情,望郷

3163

[題詞](羇旅發思)

[原文]吾妹兒尓 觸者無二 荒礒廻尓 吾衣手者 所<沾>可母
[訓読]我妹子に触るとはなしに荒礒廻に我が衣手は濡れにけるかも
[仮名],わぎもこに,ふるとはなしに,ありそみに,わがころもでは,ぬれにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]沽 → 沾 [京]
[_]
[KW],羈旅,恋情,望郷

3164

[題詞](羇旅發思)

[原文]室之浦之 湍戸之埼有 鳴嶋之 礒越浪尓 所<沾>可聞
[訓読]室の浦の瀬戸の崎なる鳴島の磯越す波に濡れにけるかも
[仮名],むろのうらの,せとのさきなる,なきしまの,いそこすなみに,ぬれにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]沽 → 沾 [京]
[_]
[KW],地名,室津,兵庫県,御津町,金ヶ崎,君島,望郷,恋情,掛詞,羈旅

3165

[題詞](羇旅發思)

[原文]霍公鳥 飛幡之浦尓 敷浪乃 屡君乎 将見因毛鴨
[訓読]霍公鳥飛幡の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがも
[仮名],ほととぎす,とばたのうらに,しくなみの,しくしくきみを,みむよしもがも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],動物,枕詞,地名,福岡県,北九州市,戸畑,序詞,恋情,望郷,羈旅

3166

[題詞](羇旅發思)

[原文]吾妹兒乎 外耳哉将見 越懈乃 子難<懈>乃 嶋楢名君
[訓読]我妹子を外のみや見む越の海の子難の海の島ならなくに
[仮名],わぎもこを,よそのみやみむ,こしのうみの,こがたのうみの,しまならなくに
[_]
[左注]
[_]
[校異]懈 [西(上書訂正)][元][紀][温]
[_]
[KW],地名,北陸,石川,富山,恋情,羈旅,遊行女婦

3167

[題詞](羇旅發思)

[原文]浪間従 雲位尓所見 粟嶋之 不相物故 吾尓所依兒等
[訓読]波の間ゆ雲居に見ゆる粟島の逢はぬものゆゑ我に寄そる子ら
[仮名],なみのまゆ,くもゐにみゆる,あはしまの,あはぬものゆゑ,わによそるこら
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,地名,序詞,うわさ,恋愛

3168

[題詞](羇旅發思)

[原文]衣袖之 真若之浦之 愛子地 間無時無 吾戀钁
[訓読]衣手の真若の浦の真砂地間なく時なし我が恋ふらくは
[仮名],ころもでの,まわかのうらの,まなごつち,まなくときなし,あがこふらくは
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,地名,和歌の浦,和歌山,序詞,恋情,望郷,羈旅

3169

[題詞](羇旅發思)

[原文]能登海尓 釣為海部之 射去火之 光尓伊徃 月待香光
[訓読]能登の海に釣する海人の漁り火の光りにいませ月待ちがてり
[仮名],のとのうみに,つりするあまの,いざりひの,ひかりにいませ,つきまちがてり
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,地名,能登,石川,遊行女婦,誘い歌

3170

[題詞](羇旅發思)

[原文]思香乃白水郎乃 <釣>為燭有 射去火之 髣髴妹乎 将見因毛欲得
[訓読]志賀の海人の釣りし燭せる漁り火のほのかに妹を見むよしもがも
[仮名],しかのあまの,つりしともせる,いざりひの,ほのかにいもを,みむよしもがも
[_]
[左注]
[_]
[校異]鉤 → 釣 [元][紀][温][京]
[_]
[KW],地名,福岡,序詞,恋情,望郷,羈旅

3171

[題詞](羇旅發思)

[原文]難波方 水手出船之 遥々 別来礼杼 忘金津毛
[訓読]難波潟漕ぎ出る舟のはろはろに別れ来ぬれど忘れかねつも
[仮名],なにはがた,こぎづるふねの,はろはろに,わかれきぬれど,わすれかねつも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,大阪,序詞,恋情,望郷

3172

[題詞](羇旅發思)

[原文]浦廻榜 <熊>野舟附 目頬志久 懸不思 月毛日毛無
[訓読]浦廻漕ぐ熊野舟つきめづらしく懸けて思はぬ月も日もなし
[仮名],うらみこぐ,くまのぶねつき,めづらしく,かけておもはぬ,つきもひもなし
[_]
[左注]
[_]
[校異]能 → 熊 [代匠記初校本]
[_]
[KW],序詞,羈旅,恋情,望郷

3173

[題詞](羇旅發思)

[原文]松浦舟 乱穿江之 水尾早 楫取間無 所念鴨
[訓読]松浦舟騒く堀江の水脈早み楫取る間なく思ほゆるかも
[仮名],まつらぶね,さわくほりえの,みをはやみ,かぢとるまなく,おもほゆるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,大阪,羈旅,望郷,序詞,恋情

3174

[題詞](羇旅發思)

[原文]射去為 海部之楫音 湯<按>干 妹心 乗来鴨
[訓読]漁りする海人の楫音ゆくらかに妹は心に乗りにけるかも
[仮名],いざりする,あまのかぢおと,ゆくらかに,いもはこころに,のりにけるかも
[_]
[左注]
[_]
[校異]鞍 → 按 [元][類]
[_]
[KW],序詞,恋情,羈旅,遊行女婦

3175

[題詞](羇旅發思)

[原文]若乃浦尓 袖左倍<沾>而 忘貝 拾杼妹者 不所忘尓
[訓読]和歌の浦に袖さへ濡れて忘れ貝拾へど妹は忘らえなくに [忘れかねつも]
[仮名],わかのうらに,そでさへぬれて,わすれがひ,ひりへどいもは,わすらえなくに,[わ すれかねつも]
[_]
[左注][或本歌末句云 忘可祢都母]
[_]
[校異]若乃 [元][類](塙)(楓) 若 / 沽 → 沾 [京]
[_]
[KW],地名,和歌山,異伝,恋情,望郷

3175S

[題詞](羇旅發思)[或本歌末句云]

[原文][忘可祢都母]
[訓読][忘れかねつも]
[仮名],[わすれかねつも]
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],異伝,羈旅,恋情,望郷

3176

[題詞](羇旅發思)

[原文]草枕 羈西居者 苅薦之 擾妹尓 不戀日者無
[訓読]草枕旅にし居れば刈り薦の乱れて妹に恋ひぬ日はなし
[仮名],くさまくら,たびにしをれば,かりこもの,みだれていもに,こひぬひはなし
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],枕詞,羈旅,恋情,望郷

3177

[題詞](羇旅發思)

[原文]然海部之 礒尓苅干 名告藻之 名者告手師乎 如何相難寸
[訓読]志賀の海人の礒に刈り干すなのりその名は告りてしを何か逢ひかたき
[仮名],しかのあまの,いそにかりほす,なのりその,なはのりてしを,なにかあひかたき
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],地名,福岡,植物,序詞,女歌,羈旅,遊行女婦

3178

[題詞](羇旅發思)

[原文]國遠見 念勿和備曽 風之共 雲之行如 言者将通
[訓読]国遠み思ひなわびそ風の共雲の行くごと言は通はむ
[仮名],くにとほみ,おもひなわびそ,かぜのむた,くものゆくごと,ことはかよはむ
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],羈旅,女歌,旅立ち,恋情

3179

[題詞](羇旅發思)

[原文]留西 人乎念尓 蜒野 居白雲 止時無
[訓読]留まりにし人を思ふに秋津野に居る白雲のやむ時もなし
[仮名],とまりにし,ひとをおもふに,あきづのに,ゐるしらくもの,やむときもなし
[_]
[左注]
[_]
[校異]
[_]
[KW],序詞,地名,和歌山,吉野,奈良,恋情,望郷