University of Virginia Library

寄物陳思

2415

[題詞]寄物陳思

[原文]處女等乎 袖振山 水垣<乃> 久時由 念来吾等者
[訓読]娘子らを袖振る山の瑞垣の久しき時ゆ思ひけり我れは
[仮名],をとめらを,そでふるやまの,みづかきの,ひさしきときゆ,おもひけりわれは
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]<> → 乃 [嘉][類]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情,歌垣,奈良,天理,地名,枕詞

2416

[題詞](寄物陳思)

[原文]千早振 神持在 命 誰為 長欲為
[訓読]ちはやぶる神の持たせる命をば誰がためにかも長く欲りせむ
[仮名],ちはやぶる,かみのもたせる,いのちをば,たがためにかも,ながくほりせむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞

2417

[題詞](寄物陳思)

[原文]石上 振神杉 神成 戀我 更為鴨
[訓読]石上布留の神杉神さぶる恋をも我れはさらにするかも
[仮名],いそのかみ,ふるのかむすぎ,かむさぶる,こひをもあれは,さらにするかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,恋情,奈良,天理,地名

2418

[題詞](寄物陳思)

[原文]何 名負神 幣嚮奉者 吾念妹 夢谷見
[訓読]いかならむ名負ふ神に手向けせば我が思ふ妹を夢にだに見む
[仮名],いかならむ,なおふかみにし,たむけせば,あがおもふいもを,いめにだにみむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2419

[題詞](寄物陳思)

[原文]天地 言名絶 有 汝吾 相事止
[訓読]天地といふ名の絶えてあらばこそ汝と我れと逢ふことやまめ
[仮名],あめつちと,いふなのたえて,あらばこそ,いましとあれと,あふことやまめ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2420

[題詞](寄物陳思)

[原文]月見 國同 山隔 愛妹 隔有鴨
[訓読]月見れば国は同じぞ山へなり愛し妹はへなりたるかも
[仮名],つきみれば,くにはおやじぞ,やまへなり,うつくしいもは,へなりたるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2421

[題詞](寄物陳思)

[原文]も路者 石踏山 無鴨 吾待公 馬爪盡
[訓読]来る道は岩踏む山はなくもがも我が待つ君が馬つまづくに
[仮名],くるみちは,いはふむやまは,なくもがも,わがまつきみが,うまつまづくに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,女歌

2422

[題詞](寄物陳思)

[原文]石根踏 重成山 雖不有 不相日數 戀度鴨
[訓読]岩根踏みへなれる山はあらねども逢はぬ日まねみ恋ひわたるかも
[仮名],いはねふみ,へなれるやまは,あらねども,あはぬひまねみ,こひわたるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2423

[題詞](寄物陳思)

[原文]路後 深津嶋山 ま 君目不見 苦有
[訓読]道の後深津島山しましくも君が目見ねば苦しかりけり
[仮名],みちのしり,ふかつしまやま,しましくも,きみがめみねば,くるしかりけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,広島,福山,地名

2424

[題詞](寄物陳思)

[原文]紐鏡 能登香山 誰故 君来座在 紐不開寐
[訓読]紐鏡能登香の山も誰がゆゑか君来ませるに紐解かず寝む
[仮名],ひもかがみ,のとかのやまも,たがゆゑか,きみきませるに,ひもとかずねむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,地名

2425

[題詞](寄物陳思)

[原文]山科 強田山 馬雖在 歩吾来 汝念不得
[訓読]山科の木幡の山を馬はあれど徒歩より我が来し汝を思ひかねて
[仮名],やましなの,こはたのやまを,うまはあれど,かちよりわがこし,なをおもひかね て
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,恋情,羈旅

2426

[題詞](寄物陳思)

[原文]遠山 霞被 益遐 妹目不見 吾戀
[訓読]遠山に霞たなびきいや遠に妹が目見ねば我れ恋ひにけり
[仮名],とほやまに,かすみたなびき,いやとほに,いもがめみねば,あれこひにけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞

2427

[題詞](寄物陳思)

[原文]是川 瀬々敷浪 布々 妹心 乗在鴨
[訓読]宇治川の瀬々のしき波しくしくに妹は心に乗りにけるかも
[仮名],うぢかはの,せぜのしきなみ,しくしくに,いもはこころに,のりにけるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,京都,地名,恋情

2428

[題詞](寄物陳思)

[原文]千早人 宇治度 速瀬 不相有 後我つ
[訓読]ちはや人宇治の渡りの瀬を早み逢はずこそあれ後も我が妻
[仮名],ちはやひと,うぢのわたりの,せをはやみ,あはずこそあれ,のちもわがつま
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,序詞,恋情

2429

[題詞](寄物陳思)

[原文]早敷哉 不相子故 徒 是川瀬 裳襴潤
[訓読]はしきやし逢はぬ子ゆゑにいたづらに宇治川の瀬に裳裾濡らしつ
[仮名],はしきやし,あはぬこゆゑに,いたづらに,うぢがはのせに,もすそぬらしつ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,恋情

2430

[題詞](寄物陳思)

[原文]是川 水阿和逆纒 行水 事不反 思始為
[訓読]宇治川の水泡さかまき行く水の事かへらずぞ思ひ染めてし
[仮名],うぢかはの,みなあわさかまき,ゆくみづの,ことかへらずぞ,おもひそめてし
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,京都,序詞,恋情

2431

[題詞](寄物陳思)

[原文]鴨川 後瀬静 後相 妹者我 雖不今
[訓読]鴨川の後瀬静けく後も逢はむ妹には我れは今ならずとも
[仮名],かもがはの,のちせしづけく,のちもあはむ,いもにはわれは,いまならずとも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,恋情,地名,序詞

2432

[題詞](寄物陳思)

[原文]言出 云忌々 山川之 當都心 塞耐在
[訓読]言に出でて言はばゆゆしみ山川のたぎつ心を塞かへたりけり
[仮名],ことにいでて,いはばゆゆしみ,やまがはの,たぎつこころを,せかへたりけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,比喩

2433

[題詞](寄物陳思)

[原文]水上 如數書 吾命 妹相 受日鶴鴨
[訓読]水の上に数書くごとき我が命妹に逢はむとうけひつるかも
[仮名],みづのうへに,かずかくごとき,わがいのち,いもにあはむと,うけひつるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,無常,誓約,水占

2434

[題詞](寄物陳思)

[原文]荒礒越 外徃波乃 外心 吾者不思 戀而死鞆
[訓読]荒礒越し外行く波の外心我れは思はじ恋ひて死ぬとも
[仮名],ありそこし,ほかゆくなみの,ほかごころ,われはおもはじ,こひてしぬとも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情

2435

[題詞](寄物陳思)

[原文]淡海々 奥白浪 雖不知 妹所云 七日越来
[訓読]近江の海沖つ白波知らずとも妹がりといはば七日越え来む
[仮名],あふみのうみ,おきつしらなみ,しらずとも,いもがりといはば,なぬかこえこむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,序詞,恋情

2436

[題詞](寄物陳思)

[原文]大船 香取海 慍下 何有人 物不念有
[訓読]大船の香取の海にいかり下ろしいかなる人か物思はずあらむ
[仮名],おほぶねの,かとりのうみに,いかりおろし,いかなるひとか,ものもはずあらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,茨城,地名,枕詞,比喩,恋情

2437

[題詞](寄物陳思)

[原文]奥藻 隠障浪 五百重浪 千重敷々 戀度鴨
[訓読]沖つ裳を隠さふ波の五百重波千重しくしくに恋ひわたるかも
[仮名],おきつもを,かくさふなみの,いほへなみ,ちへしくしくに,こひわたるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,恋情

2438

[題詞](寄物陳思)

[原文]人事 ま吾妹 縄手引 従海益 深念
[訓読]人言はしましぞ我妹綱手引く海ゆまさりて深くしぞ思ふ
[仮名],ひとごとは,しましぞわぎも,つなてひく,うみゆまさりて,ふかくしぞおもふ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,うわさ,恋情

2439

[題詞](寄物陳思)

[原文]淡海 奥嶋山 奥儲 吾念妹 事繁
[訓読]近江の海沖つ島山奥まけて我が思ふ妹が言の繁けく
[仮名],あふみのうみ,おきつしまやま,おくまけて,あがおもふいもが,ことのしげけく
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,序詞,恋情,うわさ

2440

[題詞](寄物陳思)

[原文]近江海 奥滂船 重下 蔵公之 事待吾序
[訓読]近江の海沖漕ぐ舟のいかり下ろし隠りて君が言待つ我れぞ
[仮名],あふみのうみ,おきこぐふねの,いかりおろし,こもりてきみが,ことまつわれぞ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]重 [古] 重石
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,地名,琵琶湖,滋賀,恋情,序詞

2441

[題詞](寄物陳思)

[原文]隠沼 従裏戀者 無乏 妹名告 忌物矣
[訓読]隠り沼の下ゆ恋ふればすべをなみ妹が名告りつ忌むべきものを
[仮名],こもりぬの,したゆこふれば,すべをなみ,いもがなのりつ,いむべきものを
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2442

[題詞](寄物陳思)

[原文]大土 採雖盡 世中 盡不得物 戀在
[訓読]大地は取り尽すとも世の中の尽しえぬものは恋にしありけり
[仮名],おほつちは,とりつくすとも,よのなかの,つくしえぬものは,こひにしありけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2443

[題詞](寄物陳思)

[原文]隠處 澤泉在 石根 通念 吾戀者
[訓読]隠りどの沢泉なる岩が根も通してぞ思ふ我が恋ふらくは
[仮名],こもりどの,さはいづみにある,いはがねも,とほしてぞおもふ,あがこふらくは
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2444

[題詞](寄物陳思)

[原文]白檀 石邊山 常石有 命哉 戀乍居
[訓読]白真弓石辺の山の常磐なる命なれやも恋ひつつ居らむ
[仮名],しらまゆみ,いしへのやまの,ときはなる,いのちなれやも,こひつつをらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞,序詞

2445

[題詞](寄物陳思)

[原文]淡海々 沈白玉 不知 従戀者 今益
[訓読]近江の海沈く白玉知らずして恋ひせしよりは今こそまされ
[仮名],あふみのうみ,しづくしらたま,しらずして,こひせしよりは,いまこそまされ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,恋情,序詞

2446

[題詞](寄物陳思)

[原文]白玉 纒持 従今 吾玉為 知時谷
[訓読]白玉を巻きてぞ持てる今よりは我が玉にせむ知れる時だに
[仮名],しらたまを,まきてぞもてる,いまよりは,わがたまにせむ,しれるときだに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,比喩,恋情

2447

[題詞](寄物陳思)

[原文]白玉 従手纒 不<忘> 念 何畢
[訓読]白玉を手に巻きしより忘れじと思ひけらくは何か終らむ
[仮名],しらたまを,てにまきしより,わすれじと,おもひけらくは,なにかをはらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]忌 → 忘 [類][紀][細]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,比喩

2448

[題詞](寄物陳思)

[原文]<白>玉 間開乍 貫緒 縛依 後相物
[訓読]白玉の間開けつつ貫ける緒もくくり寄すれば後もあふものを
[仮名],しらたまの,あひだあけつつ,ぬけるをも,くくりよすれば,のちもあふものを
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]烏 → 白 [万葉考] [西(右書)] 焉 / 後 (塙) 復
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,比喩,恋情

2449

[題詞](寄物陳思)

[原文]香山尓 雲位桁曵 於保々思久 相見子等乎 後戀牟鴨
[訓読]香具山に雲居たなびきおほほしく相見し子らを後恋ひむかも
[仮名],かぐやまに,くもゐたなびき,おほほしく,あひみしこらを,のちこひむかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,飛鳥,地名,奈良,序詞,恋情

2450

[題詞](寄物陳思)

[原文]雲間従 狭や月乃 於保々思久 相見子等乎 見因鴨
[訓読]雲間よりさ渡る月のおほほしく相見し子らを見むよしもがも
[仮名],くもまより,さわたるつきの,おほほしく,あひみしこらを,みむよしもがも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情

2451

[題詞](寄物陳思)

[原文]天雲 依相遠 雖不相 異手枕 吾纒哉
[訓読]天雲の寄り合ひ遠み逢はずとも異し手枕我れまかめやも
[仮名],あまくもの,よりあひとほみ,あはずとも,あたしたまくら,われまかめやも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2452

[題詞](寄物陳思)

[原文]雲谷 灼發 意追 見乍<居> 及直相
[訓読]雲だにもしるくし立たば慰めて見つつも居らむ直に逢ふまでに
[仮名],くもだにも,しるくしたたば,なぐさめて,みつつもをらむ,ただにあふまでに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]為 → 居 [万葉考]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2453

[題詞](寄物陳思)

[原文]春楊 葛山 發雲 立座 妹念
[訓読]春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしぞ思ふ
[仮名],はるやなぎ,かづらきやまに,たつくもの,たちてもゐても,いもをしぞおもふ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,奈良,地名,枕詞

2454

[題詞](寄物陳思)

[原文]春日山 雲座隠 雖遠 家不念 公念
[訓読]春日山雲居隠りて遠けども家は思はず君をしぞ思ふ
[仮名],かすがやま,くもゐかくりて,とほけども,いへはおもはず,きみをしぞおもふ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,恋情,羈旅,望郷

2455

[題詞](寄物陳思)

[原文]我故 所云妹 高山之 峯朝霧 過兼鴨
[訓読]我がゆゑに言はれし妹は高山の嶺の朝霧過ぎにけむかも
[仮名],わがゆゑに,いはれしいもは,たかやまの,みねのあさぎり,すぎにけむかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ

2456

[題詞](寄物陳思)

[原文]烏玉 黒髪山 山草 小雨零敷 益々所<思>
[訓読]ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ
[仮名],ぬばたまの,くろかみやまの,やますげに,こさめふりしき,しくしくおもほゆ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]念 → 思 [嘉][文][類][紀]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,植物,枕詞,恋情,序詞

2457

[題詞](寄物陳思)

[原文]大野 小雨被敷 木本 時依来 我念人
[訓読]大野らに小雨降りしく木の下に時と寄り来ね我が思ふ人
[仮名],おほのらに,こさめふりしく,このもとに,ときとよりこね,わがおもふひと
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2458

[題詞](寄物陳思)

[原文]朝霜 消々 念乍 何此夜 明鴨
[訓読]朝霜の消なば消ぬべく思ひつついかにこの夜を明かしてむかも
[仮名],あさしもの,けなばけぬべく,おもひつつ,いかにこのよを,あかしてむかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞

2459

[題詞](寄物陳思)

[原文]吾背兒我 濱行風 弥急 急事 益不相有
[訓読]我が背子が浜行く風のいや早に言を早みかいや逢はずあらむ
[仮名],わがせこが,はまゆくかぜの,いやはやに,ことをはやみか,いやあはずあらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,うわさ

2460

[題詞](寄物陳思)

[原文]遠妹 振仰見 偲 是月面 雲勿棚引
[訓読]遠き妹が振り放け見つつ偲ふらむこの月の面に雲なたなびき
[仮名],とほきいもが,ふりさけみつつ,しのふらむ,このつきのおもに,くもなたなびき
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,望郷

2461

[題詞](寄物陳思)

[原文]山葉 追出月 端々 妹見鶴 及戀
[訓読]山の端を追ふ三日月のはつはつに妹をぞ見つる恋ほしきまでに
[仮名],やまのはを,おふみかつきの,はつはつに,いもをぞみつる,こほしきまでに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞

2462

[題詞](寄物陳思)

[原文]我妹 吾矣念者 真鏡 照出月 影所見来
[訓読]我妹子し我れを思はばまそ鏡照り出づる月の影に見え来ね
[仮名],わぎもこし,われをおもはば,まそかがみ,てりいづるつきの,かげにみえこね
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情

2463

[題詞](寄物陳思)

[原文]久方 天光月 隠去 何名副 妹偲
[訓読]久方の天照る月の隠りなば何になそへて妹を偲はむ
[仮名],ひさかたの,あまてるつきの,かくりなば,なにになそへて,いもをしのはむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情

2464

[題詞](寄物陳思)

[原文]若月 清不見 雲隠 見欲 宇多手比日
[訓読]三日月のさやにも見えず雲隠り見まくぞ欲しきうたてこのころ
[仮名],みかづきの,さやにもみえず,くもがくり,みまくぞほしき,うたてこのころ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,鬱屈,序詞

2465

[題詞](寄物陳思)

[原文]我背兒尓 吾戀居者 吾屋戸之 草佐倍思 浦乾来
[訓読]我が背子に我が恋ひ居れば我が宿の草さへ思ひうらぶれにけり
[仮名],わがせこに,あがこひをれば,わがやどの,くささへおもひ,うらぶれにけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋情,女歌,植物

2466

[題詞](寄物陳思)

[原文]朝茅原 小野印 <空>事 何在云 公待
[訓読]浅茅原小野に標結ふ空言をいかなりと言ひて君をし待たむ
[仮名],あさぢはら,をのにしめゆふ,むなことを,いかなりといひて,きみをしまたむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]室 → 空 [嘉][文][類][紀]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,野遊び,女歌,恋情

2467

[題詞](寄物陳思)

[原文]路邊 草深百合之 後云 妹命 我知
[訓読]道の辺の草深百合の後もと言ふ妹が命を我れ知らめやも
[仮名],みちのへの,くさふかゆりの,のちもといふ,いもがいのちを,われしらめやも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,植物

2468

[題詞](寄物陳思)

[原文]<湖>葦 交在草 知草 人皆知 吾裏念
[訓読]港葦に交じれる草のしり草の人皆知りぬ我が下思ひは
[仮名],みなとあしに,まじれるくさの,しりくさの,ひとみなしりぬ,わがしたもひは
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]潮 → 湖 [類][古]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,うわさ,序詞,恋情,植物

2469

[題詞](寄物陳思)

[原文]山<萵>苣 白露重 浦經 心深 吾戀不止
[訓読]山ぢさの白露重みうらぶれて心も深く我が恋やまず
[仮名],やまぢさの,しらつゆおもみ,うらぶれて,こころもふかく,あがこひやまず
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]萬 → 萵 [嘉]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,植物

2470

[題詞](寄物陳思)

[原文]<湖> 核延子菅 不竊隠 公戀乍 有不勝鴨
[訓読]港にさ根延ふ小菅ぬすまはず君に恋ひつつありかてぬかも
[仮名],みなとに,さねばふこすげ,ぬすまはず,きみにこひつつ,ありかてぬかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]潮 → 湖 [類][古]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,序詞

2471

[題詞](寄物陳思)

[原文]山代 泉小菅 凡浪 妹心 吾不念
[訓読]山背の泉の小菅なみなみに妹が心を我が思はなくに
[仮名],やましろの,いづみのこすげ,なみなみに,いもがこころを,わがおもはなくに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情,地名,京都

2472

[題詞](寄物陳思)

[原文]見渡 三室山 石穂菅 惻隠吾 片念為 [一云 三諸山之 石小菅]
[訓読]見わたしの三室の山の巌菅ねもころ我れは片思ぞする [一云 みもろの山の岩 小菅]
[仮名],みわたしの,みむろのやまの,いはほすげ,ねもころわれは,かたもひぞする,[みも ろのやまの,いはこすげ]
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,三輪,地名,植物,序詞,恋情,片思い,異伝

2473

[題詞](寄物陳思)

[原文]菅根 惻隠君 結為 我紐緒 解人不有
[訓読]菅の根のねもころ君が結びてし我が紐の緒を解く人もなし
[仮名],すがのねの,ねもころきみが,むすびてし,わがひものをを,とくひともなし
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,失恋,枕詞

2474

[題詞](寄物陳思)

[原文]山菅 乱戀耳 令為乍 不相妹鴨 年經乍
[訓読]山菅の乱れ恋のみせしめつつ逢はぬ妹かも年は経につつ
[仮名],やますげの,みだれこひのみ,せしめつつ,あはぬいもかも,としはへにつつ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,枕詞,恋情

2475

[題詞](寄物陳思)

[原文]我屋戸 甍子太草 雖生 戀忘草 見未生
[訓読]我が宿の軒にしだ草生ひたれど恋忘れ草見れどいまだ生ひず
[仮名],わがやどは,のきにしだくさ,おひたれど,こひわすれくさ,みれどいまだおひず
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情

2476

[題詞](寄物陳思)

[原文]打田 稗數多 雖有 擇為我 夜一人宿
[訓読]打つ田には稗はしあまたありといへど選えし我れぞ夜をひとり寝る
[仮名],うつたには,ひえはしあまた,ありといへど,えらえしわれぞ,よをひとりぬる
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情

2477

[題詞](寄物陳思)

[原文]足引 名負山菅 押伏 君結 不相有哉
[訓読]あしひきの名負ふ山菅押し伏せて君し結ばば逢はずあらめやも
[仮名],あしひきの,なおふやますげ,おしふせて,きみしむすばば,あはずあらめやも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,植物,恋情

2478

[題詞](寄物陳思)

[原文]秋柏 潤和川邊 細竹目 人不顏面 <公无>勝
[訓読]秋柏潤和川辺の小竹の芽の人には忍び君に堪へなくに
[仮名],あきかしは,うるわかはへの,しののめの,ひとにはしのび,きみにあへなくに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]君無 → 公无 [嘉][類]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,植物,枕詞,序詞,恋情

2479

[題詞](寄物陳思)

[原文]核葛 後相 夢耳 受日度 年經乍
[訓読]さね葛後も逢はむと夢のみにうけひわたりて年は経につつ
[仮名],さねかづら,のちもあはむと,いめのみに,うけひわたりて,としはへにつつ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,枕詞,恋情

2480

[題詞](寄物陳思)

[原文]路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀つ [或本歌<曰> 灼然 人知尓家里 継而之念者]
[訓読]道の辺のいちしの花のいちしろく人皆知りぬ我が恋妻は [或本歌曰 いちしろ く人知りにけり継ぎてし思へば]
[仮名],みちのへの,いちしのはなの,いちしろく,ひとみなしりぬ,あがこひづまは,[いち しろく,ひとしりにけり,つぎてしおもへば]
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 / 云 → 曰 [嘉][類]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,うわさ,露見,異伝

2481

[題詞](寄物陳思)

[原文]大野 跡状不知 印結 有不得 吾眷
[訓読]大野らにたどきも知らず標結ひてありかつましじ我が恋ふらくは
[仮名],おほのらに,たづきもしらず,しめゆひて,ありかつましじ,あがこふらくは
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,比喩

2482

[題詞](寄物陳思)

[原文]水底 生玉藻 打靡 心依 戀比日
[訓読]水底に生ふる玉藻のうち靡き心は寄りて恋ふるこのころ
[仮名],みなそこに,おふるたまもの,うちなびき,こころはよりて,こふるこのころ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,植物,恋情

2483

[題詞](寄物陳思)

[原文]敷栲之 衣手離而 玉藻成 靡可宿濫 和乎待難尓
[訓読]敷栲の衣手離れて玉藻なす靡きか寝らむ我を待ちかてに
[仮名],しきたへの,ころもでかれて,たまもなす,なびきかぬらむ,わをまちかてに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,髪

2484

[題詞](寄物陳思)

[原文]君不来者 形見為等 我二人 殖松木 君乎待出牟
[訓読]君来ずは形見にせむと我がふたり植ゑし松の木君を待ち出でむ
[仮名],きみこずは,かたみにせむと,わがふたり,うゑしまつのき,きみをまちいでむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,植物,勧誘,恋情

2485

[題詞](寄物陳思)

[原文]袖振 可見限 吾雖有 其松枝 隠在
[訓読]袖振らば見ゆべき限り我れはあれどその松が枝に隠らひにけり
[仮名],そでふらば,みゆべきかぎり,われはあれど,そのまつがえに,かくらひにけり
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,女歌,後朝,別れ,植物

2486

[題詞](寄物陳思)

[原文]珍海 濱邊小松 根深 吾戀度 人子め
[訓読]茅渟の海の浜辺の小松根深めて我れ恋ひわたる人の子ゆゑに
[仮名],ちぬのうみの,はまへのこまつ,ねふかめて,あれこひわたる,ひとのこゆゑに
[_]
[左注]或本歌<曰> 血沼之海之 塩干能小松 根母己呂尓 戀屋度 人兒故尓 /(以前一百 四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]歌 [西] 謌 / 云 → 曰 [嘉][類][紀]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,大阪,植物,恋情,序詞,掛詞,地名

2486S

[題詞](寄物陳思)或本歌<曰>

[原文]血沼之海之 塩干能小松 根母己呂尓 戀屋度 人兒故尓
[訓読]茅渟の海の潮干の小松ねもころに恋ひやわたらむ人の子ゆゑに
[仮名]ちぬのうみの,しほひのこまつ,ねもころに,こひやわたらむ,ひとのこゆゑに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,大阪,地名,植物,序詞,恋情

2487

[題詞](寄物陳思)

[原文]平山 子松末 有廉叙波 我思妹 不相止<者>
[訓読]奈良山の小松が末のうれむぞは我が思ふ妹に逢はずやみなむ
[仮名],ならやまの,こまつがうれの,うれむぞは,あがおもふいもに,あはずやみなむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]看 → 者 [嘉][文][類][紀] (塙) 去
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,序詞,恋情,植物

2488

[題詞](寄物陳思)

[原文]礒上 立廻香<樹> 心哀 何深目 念始
[訓読]礒の上に立てるむろの木ねもころに何しか深め思ひそめけむ
[仮名],いそのうへに,たてるむろのき,ねもころに,なにしかふかめ,おもひそめけむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]瀧 → 樹 [万葉考]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情

2489

[題詞](寄物陳思)

[原文]橘 本我立 下枝取 成哉君 問子等
[訓読]橘の本に我を立て下枝取りならむや君と問ひし子らはも
[仮名],たちばなの,もとにわをたて,しづえとり,ならむやきみと,とひしこらはも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物

2490

[題詞](寄物陳思)

[原文]天雲尓 翼打附而 飛鶴乃 多頭々々思鴨 君不座者
[訓読]天雲に翼打ちつけて飛ぶ鶴のたづたづしかも君しまさねば
[仮名],あまくもに,はねうちつけて,とぶたづの,たづたづしかも,きみしまさねば
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,動物,序詞,恋情

2491

[題詞](寄物陳思)

[原文]妹戀 不寐朝明 男為鳥 従是此度 妹使
[訓読]妹に恋ひ寐ねぬ朝明にをし鳥のこゆかく渡る妹が使か
[仮名],いもにこひ,いねぬあさけに,をしどりの,こゆかくわたる,いもがつかひか
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情

2492

[題詞](寄物陳思)

[原文]念 餘者 丹穂鳥 足<沾>来 人見鴨
[訓読]思ひにしあまりにしかばにほ鳥のなづさひ来しを人見けむかも
[仮名],おもひにし,あまりにしかば,にほどりの,なづさひこしを,ひとみけむかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]沽 → 沾 [文][細][温]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,うわさ,他人,恋情,難渋,枕詞

2493

[題詞](寄物陳思)

[原文]高山 峯行完 <友>衆 袖不振来 忘念勿
[訓読]高山の嶺行くししの友を多み袖振らず来ぬ忘ると思ふな
[仮名],たかやまの,みねゆくししの,ともをおほみ,そでふらずきぬ,わするとおもふな
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]支 → 友 [嘉][文][紀]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,序詞,別離,送別

2494

[題詞](寄物陳思)

[原文]大船 真楫繁拔 榜間 極太戀 年在如何
[訓読]大船に真楫しじ貫き漕ぐほともここだ恋ふるを年にあらばいかに
[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,こぐほとも,ここだこふるを,としにあらばいかに
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,船旅,羈旅

2495

[題詞](寄物陳思)

[原文]足常 母養子 眉隠 隠在妹 見依鴨
[訓読]たらつねの母が養ふ蚕の繭隠り隠れる妹を見むよしもがも
[仮名],たらつねの,ははがかふこの,まよごもり,こもれるいもを,みむよしもがも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,序詞

2496

[題詞](寄物陳思)

[原文]肥人 額髪結在 染木綿 染心 我忘哉 [一云 所忘目八方]
[訓読]肥人の額髪結へる染木綿の染みにし心我れ忘れめや [一云 忘らえめやも]
[仮名],こまひとの,ぬかがみゆへる,しめゆふの,しみにしこころ,われわすれめや,[わす らえめやも]
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,肥前,熊本,地名,序詞,植物,恋情,思い出,餞別,異伝

2497

[題詞](寄物陳思)

[原文]早人 名負夜音 灼然 吾名謂 つ恃
[訓読]隼人の名に負ふ夜声のいちしろく我が名は告りつ妻と頼ませ
[仮名],はやひとの,なにおふよごゑの,いちしろく,わがなはのりつ,つまとたのませ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,薩摩,地名,露見,恋情,女歌,名告り

2498

[題詞](寄物陳思)

[原文]剱刀 諸刃利 足踏 死々 公依
[訓読]剣大刀諸刃の利きに足踏みて死なば死なむよ君によりては
[仮名],つるぎたち,もろはのときに,あしふみて,しなばしなむよ,きみによりては
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情

2499

[題詞](寄物陳思)

[原文]我妹 戀度 劔刀 名惜 念不得
[訓読]我妹子に恋ひしわたれば剣大刀名の惜しけくも思ひかねつも
[仮名],わぎもこに,こひしわたれば,つるぎたち,なのをしけくも,おもひかねつも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,うわさ,名前,恋情

2500

[題詞](寄物陳思)

[原文]朝月 日向黄楊櫛 雖舊 何然公 見不飽
[訓読]朝月の日向黄楊櫛古りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ
[仮名],あさづきの,ひむかつげくし,ふりぬれど,なにしかきみが,みれどあかざらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,宮崎,時間

2501

[題詞](寄物陳思)

[原文]里遠 眷浦經 真鏡 床重不去 夢所見与
[訓読]里遠み恋ひうらぶれぬまそ鏡床の辺去らず夢に見えこそ
[仮名],さとどほみ,こひうらぶれぬ,まそかがみ,とこのへさらず,いめにみえこそ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情

2502

[題詞](寄物陳思)

[原文]真鏡 手取以 朝々 雖見君 飽事無
[訓読]まそ鏡手に取り持ちて朝な朝な見れども君は飽くこともなし
[仮名],まそかがみ,てにとりもちて,あさなさな,みれどもきみは,あくこともなし
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情

2503

[題詞](寄物陳思)

[原文]夕去 床重不去 黄楊枕 <何>然汝 主待固
[訓読]夕されば床の辺去らぬ黄楊枕何しか汝れが主待ちかたき
[仮名],ゆふされば,とこのへさらぬ,つげまくら,なにしかなれが,ぬしまちかたき
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]射 → 何 [万葉考]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,女歌,空虚,

2504

[題詞](寄物陳思)

[原文]解衣 戀乱乍 浮沙 生吾 <有>度鴨
[訓読]解き衣の恋ひ乱れつつ浮き真砂生きても我れはありわたるかも
[仮名],とききぬの,こひみだれつつ,うきまなご,いきてもわれは,ありわたるかも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]戀 → 有 [嘉]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情

2505

[題詞](寄物陳思)

[原文]梓弓 引不許 有者 此有戀 不相
[訓読]梓弓引きてゆるさずあらませばかかる恋にはあはざらましを
[仮名],あづさゆみ,ひきてゆるさず,あらませば,かかるこひには,あはざらましを
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,嘆き,女歌

2506

[題詞](寄物陳思)

[原文]事霊 八十衢 夕占問 占正謂 妹相依
[訓読]言霊の八十の街に夕占問ふ占まさに告る妹は相寄らむ
[仮名],ことだまの,やそのちまたに,ゆふけとふ,うらまさにのる,いもはあひよらむ
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,占い,恋情

2507

[題詞](寄物陳思)

[原文]玉桙 路徃占 占相 妹逢 我謂
[訓読]玉桙の道行き占に占なへば妹に逢はむと我れに告りつも
[仮名],たまほこの,みちゆきうらに,うらなへば,いもにあはむと,われにのりつも
[_]
[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)
[_]
[校異]
[_]
[KW],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,占い,恋情