University of Virginia Library

2089

[題詞](七夕)

[原文]乾坤之 初時従 天漢 射向居而 一年丹 兩遍不遭 妻戀尓 物念人 天漢 安乃川 原乃 有通 出々乃渡丹 具穂船乃 艫丹裳舳丹裳 船装 真梶繁<抜> 旗<芒> 本葉裳具世 丹 秋風乃 吹<来>夕丹 天<河> 白浪凌 落沸 速湍渉 稚草乃 妻手枕迹 大<舟>乃 思憑 而 滂来等六 其夫乃子我 荒珠乃 年緒長 思来之 戀将盡 七月 七日之夕者 吾毛悲焉
[訓読]天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて 一年に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出の渡りに そほ舟の 艫にも舳にも 舟装ひ ま楫しじ貫き 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落 ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来らむ その夫 の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲し も
[仮名],あめつちの,はじめのときゆ,あまのがは,いむかひをりて,ひととせに,ふたたび あはぬ,つまごひに,ものもふひと,あまのがは,やすのかはらの,ありがよふ,いでのわた りに,そほぶねの,ともにもへにも,ふなよそひ,まかぢしじぬき,はたすすき,もとはもそ よに,あきかぜの,ふきくるよひに,あまのがは,しらなみしのぎ,おちたぎつ,はやせわた りて,わかくさの,つまをまかむと,おほぶねの,おもひたのみて,こぎくらむ,そのつまの こが,あらたまの,としのをながく,おもひこし,こひつくすらむ,ふみつきの,なぬかのよ ひは,われもかなしも
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[左注]
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[校異]出々 (塙)(楓) 出 / <> → 抜 [西(右書)][元][類][紀] / 荒 → 芒 [万葉考] / <> → 来 [元][類][紀] / 川 → 河 [元][類][紀] / 船 → 舟 [元][紀]
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[KW],秋雑歌,七夕