University of Virginia Library

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[題詞]藤原宮御井歌

[原文]八隅知之 和期大王 高照 日之皇子 麁妙乃 藤井我原尓 大御門 始賜而 埴安乃 堤上尓 在立之 見之賜者 日本乃 青香具山者 日經乃 大御門尓 春山<跡> 之美佐備 立有 畝火乃 此美豆山者 日緯能 大御門尓 弥豆山跡 山佐備伊座 耳<為>之 青菅山者 背友乃 大御門尓 宣名倍 神佐備立有 名細 吉野乃山者 影友乃 大御門<従> 雲居尓 曽 遠久有家留 高知也 天之御蔭 天知也 日<之>御影乃 水許曽婆 常尓有米 御井之清 水
[訓読]やすみしし 我ご大君 高照らす 日の皇子 荒栲の 藤井が原に 大御門 始めた まひて 埴安の 堤の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山は 日の経の 大 御門に 春山と 茂みさび立てり 畝傍の この瑞山は 日の緯の 大御門に 瑞山と 山さ びいます 耳成の 青菅山は 背面の 大御門に よろしなへ 神さび立てり 名ぐはし 吉 野の山は かげともの 大御門ゆ 雲居にぞ 遠くありける 高知るや 天の御蔭 天知る や 日の御蔭の 水こそば とこしへにあらめ 御井のま清水
[仮名],やすみしし,わごおほきみ,たかてらす,ひのみこ,あらたへの,ふぢゐがはらに,お ほみかど,はじめたまひて,はにやすの,つつみのうへに,ありたたし,めしたまへば,やま との,あをかぐやまは,ひのたての,おほみかどに,はるやまと,しみさびたてり,うねびの ,このみづやまは,ひのよこの,おほみかどに,みづやまと,やまさびいます,みみなしの,あ をすがやまは,そともの,おほみかどに,よろしなへ,かむさびたてり,なぐはし,よしのの やまは,かげともの,おほみかどゆ,くもゐにぞ,とほくありける,たかしるや,あめのみか げ,あめしるや,ひのみかげの,みづこそば,とこしへにあらめ,みゐのましみづ
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[左注](右歌作者未詳)
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[校異]路 → 跡 [古] / 高 → 為 [万葉考] / 徒 → 従 [元][類][紀] / <> → 之 [元][類][古][冷][紀]
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[KW],雑歌,藤原,宮廷讃美,御井,枕詞,地名,奈良