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[題詞]幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌
[原文]八隅知之 吾大王之 所聞食 天下尓 國者思毛 澤二雖有 山川之 清河内跡 御心
乎 吉野乃國之 花散相 秋津乃野邊尓 宮柱 太敷座波 百礒城乃 大宮人者 船並弖 旦
川渡 舟<競> 夕河渡 此川乃 絶事奈久 此山乃 弥高<思良>珠 水激 瀧之宮子波 見礼
跡不飽可<問>
[訓読]やすみしし 我が大君の きこしめす 天の下に 国はしも さはにあれども 山川
の 清き河内と 御心を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺に 宮柱 太敷きませば もも
しきの 大宮人は 舟並めて 朝川渡る 舟競ひ 夕川渡る この川の 絶ゆることなく こ
の山の いや高知らす 水激る 瀧の宮処は 見れど飽かぬかも
[仮名],やすみしし,わがおほきみの,きこしめす,あめのしたに,くにはしも,さはにあれ
ども,やまかはの,きよきかふちと,みこころを,よしののくにの,はなぢらふ,あきづのの
へに,みやばしら,ふとしきませば,ももしきの,おほみやひとは,ふねなめて,あさかはわ
たる,ふなぎほひ,ゆふかはわたる,このかはの,たゆることなく,このやまの,いやたかし
らす,みづはしる,たきのみやこは,みれどあかぬかも
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[左注](右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野
宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌)
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[校異]並 [古][紀] 并 / 竟 → 競 [元][類][紀] / 良思 → 思良 [元][類][紀] / 聞 → 問
[元][類
][冷]
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[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,吉野,離宮,行幸,従駕,宮廷讃美,国見,地名,枕詞