文化学院の設立について
与謝野晶子 (Bunkagakuin no setsuritsu ni tsuite) | ||
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毎年三、四十人を出ない少数の女生徒を募集して、特別な高等自由教育を施すという事は、偏頗な行為のようですけれども、個人の仕事である以上、やむをえないことだと思います。一般にわたる多数の子女教育を思わないのではありませんが、それは自分たちの力で及ばない所です。私たちは自分の手の届く範囲で微力を尽すのでなければ、社会の何事にも関係する機会がなくて終るでしょう。三、四十人の教育でも、それをしないには勝ると思います。また数年の後に三、四十人ずつの卒業生を毎年出すとすれば、その三、四十人は優良な種子を社会に 播 ( ま ) くようなものです。その種子が更に幾倍かの好い種子を生むに到るでしょう。
学校教育に無経験な私たちの事業は、みずから法外な冒険を敢てするものであることを思い、前途の多難を覚悟しています。今は教育界においても、社会においても、従来の教育に不満を感じている 炯眼 ( けいがん ) 達識の人々が沢山にある時です。たまたま私たちのような人間が飛び出して、重苦しい教育界の空気を破るために、こういう芸術的な自由教育を試みるに到ったことも、それらの人々から寛容と同情とを以て許して頂けることであろうと思います。
以上は、粗雑な走り書きで私だけの意見を述べたのです。文化学院の教育方針については石井、西村二氏の御意見が学院の規則と共に発表されるのを御覧下さい。(一九二一年一月)
文化学院の設立について
与謝野晶子 (Bunkagakuin no setsuritsu ni tsuite) | ||