University of Virginia Library

一握の砂

凾館なる郁雨宮崎大四郎君

同國の友文學士花明金田一京助君

この集を兩君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを兩君の前に示しつくしたるものの如し。從つて兩君はここに歌はれたる歌の一々につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。

また一本をとりて亡兒眞一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の藥餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。

著者

明治四十一年夏以後の作一千餘首中より五百五十一首を拔きてこの集に收む。集中五章、感興の來由するところ相邇きをたづねて假にわかてるのみ。「秋風のこころよさに」は明治四十一年秋の記念なり。