University of Virginia Library

けものを三つ集て發句せよといへるに

猪の狸寢いりや鹿の戀

鹿啼や宵の雨曉の月

たち聞の心地こそすれ鹿の聲

山守の月夜野守の霜夜鹿の聲

鹿笛を僞り鳴らす山屋形

雁啼や舟に魚燒く琵琶湖上

鵯のこぼし去ぬる實のあかき

手斧打音も木深し啄木鳥

鶉野や聖の笈も草がくれ

鱸得てうしろめたさよ浪の月

鮎落て宮木とゞまる麓哉

沙魚を煮る小家や桃のむかし顏

染あへぬ尾のゆかしさよ赤とんぼ

とんぼうや村なつかしき壁の色

古御所や虫の飛つく金屏風

[mushikuruma ]や相如が絃の切るゝ時

いてう踏でしづかに兒の下山かな