蕪翁句集 巻之上
几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ||
けものを三つ集て發句せよといへるに
猪の狸寢いりや鹿の戀
鹿啼や宵の雨曉の月
たち聞の心地こそすれ鹿の聲
山守の月夜野守の霜夜鹿の聲
鹿笛を僞り鳴らす山屋形
雁啼や舟に魚燒く琵琶湖上
鵯のこぼし去ぬる實のあかき
手斧打音も木深し啄木鳥
鶉野や聖の笈も草がくれ
鱸得てうしろめたさよ浪の月
鮎落て宮木とゞまる麓哉
沙魚を煮る小家や桃のむかし顏
染あへぬ尾のゆかしさよ赤とんぼ
とんぼうや村なつかしき壁の色
古御所や虫の飛つく金屏風
[mushikuruma ]や相如が絃の切るゝ時
いてう踏でしづかに兒の下山かな
蕪翁句集 巻之上
几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ||