蕪翁句集 巻之上
几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ||
伏見やき
刈稻の神に仕ふや土の恩
大高に君しろしめせことし米
熊野路や三日の粮のことし米
新米もまだ草の實の匂ひ哉
升飮の價は取らぬ新酒哉
新そばや根來の椀に盛來ル
迷子を呼べば打止む碪哉
きぬた聞に月の吉野に入身かな
聲深き庄司がもとのきぬたかな
比叡にかよふ麓の家の砧かな
枕にと砧よせたるたはれかな
なつかしき忍の里のきぬた哉
旅人に我夜しらるゝきぬた哉
わたとりや犬を家路に追かへし
徳本の門も過たり藥ほり
藥掘けふは蛇骨を得たりけり
地藏會やちか道をゆく祭り客
腹あしき僧も餅くへ城南神
狩衣の袖より捨る扇かな
窓の灯を山へな見せそ鹿の聲
小男鹿や角遠近にひとつつゝ
蕪翁句集 巻之上
几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ||