University of Virginia Library

伏見やき

刈稻の神に仕ふや土の恩

大高に君しろしめせことし米

熊野路や三日の粮のことし米

新米もまだ草の實の匂ひ哉

升飮の價は取らぬ新酒哉

新そばや根來の椀に盛來

迷子を呼べば打止む碪哉

きぬた聞に月の吉野に入身かな

聲深き庄司がもとのきぬたかな

比叡にかよふ麓の家の砧かな

枕にと砧よせたるたはれかな

なつかしき忍の里のきぬた哉

旅人に我夜しらるゝきぬた哉

わたとりや犬を家路に追かへし

徳本の門も過たり藥ほり

藥掘けふは蛇骨を得たりけり

地藏會やちか道をゆく祭り客

腹あしき僧も餅くへ城南神

狩衣の袖より捨る扇かな

窓の灯を山へな見せそ鹿の聲

小男鹿や角遠近にひとつつゝ