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きら/\しきもの

大將の御さきおひたる。孔雀經の御讀經。御修法は五大尊。藏人式部丞。白馬の日、大路ねりたる。御齋會、左右衞門佐摺衣やりたる。季の御讀經。熾盛光の御修法。 神のいたく鳴るをりに、雷鳴の陣こそいみじうおそろしけれ。左右大將、中少將などの、御格子のつらに侍ひ給ふ、いとをかしげなり。はてぬるをり、大將の仰せて、のぼりおりとの給ふらん。坤元録の御屏風こそ、をかしう覺ゆる名なれ。漢書の御屏風は、雄々しくぞ聞えたる。月次の御屏風もをかし。

方違などして夜ふかくかへる、寒きこといとわりなく、おとがひなども皆おちぬべきを、辛うじて來つきて、火桶引き寄せたるに、火の大きにて、つゆ黒みたる所なくめでたきを、こまかなる灰の中よりおこし出でたるこそ、いみじう嬉しけれ。物などいひて、火の消ゆらんも知らず居たるに、こと人の來て、炭入れておこすこそいとにくけれ。されどめぐりに置きて、中に火をあらせたるはよし。皆火を外ざまにかき遣りて、炭を重ね置きたるいただきに、火ども置きたるがいとむつかし。

雪いと高く降りたるを、例ならず御格子まゐらせて、炭櫃に火起して、物語などして集り侍ふに、「少納言よ、香爐峯の雪はいかならん」と仰せられければ、御格子あげさせて、御簾高く卷き上げたれば、笑はせたまふ。人々も「皆さる事は知り、歌などにさへうたへど、思ひこそよらざりつれ。なほこの宮の人には、さるべきなめり」 といふ。

陰陽師の許なる童こそ、いみじう物は知りたれ。祓など爲に出でたれば、祭文など讀む事、人はなほこそ聞け。そと立ちはしりて、白き水いかけさせよともいはぬに、爲ありくさまの、例知り、いささか主に物いはせぬこそ羨しけれ。さらん人もがな、つかはんとこそ覺ゆれ。

三月ばかり物忌しにとて、かりそめなる人の家にいきたれば、木どもなどはか%\しからぬ中に、柳といひて、例のやうになまめかしくはあらで、葉廣う見えてにくげなるを、「あらぬものなめり」といへば、「かかるもあり」などいふに、

さかしらに柳のまゆのひろごりて春のおもてをふする宿かな

とこそ見えしか。そのころ又おなじ物忌しに、さやうの所に出でたるに、二日といふ晝つかた、いとど徒然まさりて、只今も參りぬべき心地する程にしも、仰事あれば、いとうれしくて見る。淺緑の紙に、宰相の君いとをかしく書き給へり。

いかにしてすぎにしかたを過しけん暮しわづらふ昨日けふ哉

となん。わたくしには、「今日しも千年の心地するを、曉だに疾く」とあり。この君のの給はんだにをかしかるべきを、まして仰事のさまには、おろかならぬ心地すれど、啓せん事とはおぼえぬこそ。

雲のうへにくらしかねけるはるの日を所がらともながめつる哉

私には、「今宵の程も、少將にやなり侍らんずらん」とて、曉に參りたれば、「昨日の返し、暮しかねけるこそいとにくし。いみじうそしりき」と仰せらるる、いとわびしう誠にさることも。

清水に籠りたる頃、茅蜩のいみじう鳴くをあはれと聞くに、わざと御使しての給はせたりし。唐の紙の赤みたるに、

山ちかき入相の鐘のこゑごとに戀ふるこころのかずは知るらん

ものを、こよなのながゐやと書かせ給へる。紙などのなめげならぬも取り忘れたるたびにて、紫なる蓮の花びらに書きてまゐらする。

十二月二十四日、宮の御佛名の初夜の御導師聞きて出づる人は、夜半も過ぎぬらんかし。里へも出で、もしは忍びたる所へも、夜のほど出づるにもあれ、合ひ乘りたる道の程こそをかしけれ。日ごろ降りつる雪の、今朝はやみて、風などのいたう吹きつれば、垂氷のいみじうしだり、土などこそむら/\黒きなれ、屋のうへは唯おしなべて白きに、あやしき賤の屋もおもがくして、有明の月のくまなきに、いみじうをかし。かねなどおしへぎたるやうなるに、水晶の莖などいはまほしきやうにて、長く短く、殊更かけ渡したると見えて、いふにもあまりてめでたき垂氷に、下簾も懸けぬ車の簾を、いと高く上げたるは、奧までさし入りたる月に、薄色、紅梅、しろきなど、七つ八つばかり著たるうへに、濃き衣のいとあざやかなる艶など、月に映えて、をかしう見ゆる傍に、葡萄染の堅紋の指貫、白き衣どもあまた、山吹、紅など著こぼして、直衣のいと白き引きときたれば、ぬぎ垂れられて、いみじうこぼれ出でたり。指貫の片つかたは、軾の外にふみ出されたるなど、道に人の逢ひたらば、をかしと見つべし。月影のはしたなさに、後ざまへすべり入りたるを、引き寄せあらはになされて笑ふもをかし。凛々として氷鋪けりといふ詩を、かへす%\誦じておはするは、いみじうをかしうて、夜一夜もありかまほしきに、往く所の近くなるもくちをし。

宮仕する人々の出で集りて、君々の御事めで聞え、宮の内外のはしの事ども、互に語り合せたるを、おのが君々、その家あるじにて聞くこそをかしけれ。

家廣く清げにて、親族は更なり、唯うちかたらひなどする人には、宮づかへ人、片つ方にすゑてこそあらまほしけれ。さるべき折は、一所に集りゐて物語し、人の詠みたる歌、何くれと語りあはせ、人の文など持てくる、もろともに見、返事かき、また睦しうくる人もあるは、清げにうちしつらひて入れ、雨など降りてえ歸らぬも、をかしうもてなし、參らん折はその事見入れて、思はんさまにして出し立てなどせばや。よき人のおはします御有樣など、いとゆかしきぞ、けしからぬ心にやあらん。