熊坂長範といふ強盗ありて。都より奥州に通ふ金商人。三條吉次の旅宿
を襲ひ。其荷を
奪はんと攻め入りしが。思ひもよらず源家の御曹司牛若丸に防れが。こ
こにて討ちたる
る物語を。其亡靈出でて旅僧に語る事を作る。かの「烏帽子折は熊坂の
現在を冩し。こ
の「熊坂は烏帽子折後段の過去を語る 相比べ讀みて味ふべし。この熊
坂以下盜賊の
名。義經記には。出羽の由利の太郎を大將とし。越後 藤澤入道。信濃
のさんの權頭の
子息太郎。遠江の蒲 餘一。駿河の興津の十郎。上野の豐岡の源八以下。
宗徒のもの廿
五人。その勢七十人。とあり。