University of Virginia Library

院の二位の局身まかりける跡に十の歌人々よみけるに

ながれゆく水に玉なすうたかたの哀あだなるこの世なりけり
消えぬめるもとの雫をおもふにも誰かはすゑの露の身ならぬ
送りおきてかへりし道の朝露を袖にうつすはなみだなりけり
ふなをかの裾野のつかのかず添へて昔の人にきみをなしつる
あらぬよの別はげにぞうかりける淺茅が原を見るにつけても
後の世をとへと契りし言の葉や忘らるまじき形見なるらむ
おくれゐてなみだにしづむ故郷をたまのかげにも哀とや見る
跡をとふ道にや君はいりぬらむくるしき死出の山へかゝらで
名殘さへほどなく過ぎば悲しきに七日のかずを重ねずもがな
跡しのぶ人にさへまたわかるべきその日をかねて知る涙かな