University of Virginia Library

戀十首

古き妹が園に植ゑたる唐なづな誰なづさへとおぼし立つらむ
紅のよそなる色は知られねばふくにこそまづ染めはじめけれ
さま%\の歎を身には積みおきていつしめるべき思なるらむ
君をいかに細に結へるしげめゆひ立ちも離れず並びつゝみむ
こひすともみさをに人にいはればや身にしたがはぬ心やはある
思ひ出でよ三津の濱松よそたつる志賀のうらなみたゝむ袂を
うとくなるひとは心のかはるともわれとは人に心おかれじ
月をうしと眺めながらも思ふかなその夜ばかりの影とやは見し
我はたゞかへさでを著むさよ衣きてねしことを思ひ出でつゝ
川風に千鳥なくらむ冬の夜はわがおもひにてありけるものを