University of Virginia Library

郭公十首

なかむ聲や散りぬる花のなごりなるやがてまたるゝ郭公かな
春くれてこゑにはなさく郭公たづぬることもまつもかはらぬ
きかでまつ人思ひ知れほとゝぎす聞きても人は猶ぞまつめる
所からきゝがたきかと郭公さとをかへても待たむとぞ思ふ
初聲をきゝてののちはほとゝぎすまつも心のたのもしきかな
五月雨のはれまたづねて郭公くもゐにつたふ聲きこゆなり
郭公なべてきくには似ざりけりふかき山邊のあかつきのこゑ
時鳥ふかき山邊にすむかひはこずゑにつゞくこゑを聞くなり
よるの床をなきうかされむ時鳥もの思ふ袖をとひにきたらば
時鳥つきのかたぶく山の端にいでつるこゑのかへりいるかな