University of Virginia Library

讚岐の國へまかりてみのつと申す津につきて月のあかくてひゞの ても通はぬほどに遠く見えわたりたりけるに水鳥のひゞのてにつきてとび渡りけるを

しき渡す月のこほりをうたがひてひゞのてまはるあぢの村鳥
いかでわが心の雲にちりすべき見るかひありて月をながめむ
詠めをりて月の影にぞよをば見るすむもすまぬもさなりけりとは
雲晴れて身にうれひなき人のみぞさやかに月の影は見るべき
さのみやは袂に影をやどすべきよはしこゝろに月なながめそ
月にはぢてさし出でられぬ心かなながむる袖に影のやどれば
心をば見る人ごとにくるしめてなにかは月のとりどころなる
露けさはうき身の袖のくせなるを月見る咎におほせつるかな
ながめきて月いかばかり忍ばれむこのよし雲の外になりなば
いつかわれこのよの空をへだたらむあはれ/\と月を思ひて
露もありつかへす%\も思も出でてひとりぞ見つる朝顏の花
ひときれは都を捨てゝ出づれどもめぐりて花をきそのかけ橋
捨てたれど隱れてすまぬ人になれば猶世にあるに似たるなりけり
世の中をすてゝ捨てえぬ心地して都はなれぬわが身なりけり
すてし折の心をさらにあらためて見るよの人に別れ果てなむ
思へ心人のあらばや世にも恥ぢむさりとてやはと諌むばかりぞ
呉竹の節しげからぬよなりせばこの君はとてさし出でなまし
あしよしを思ひわくこそ苦しけれ只あらるればあられける身を
深くいるは月ゆゑとしもなき物をうき世忍ばむみ吉野の山