University of Virginia Library

やがてそれが上は大師の御師にあひまゐらせさせおはしましたる 嶺なりわかはいしさとうの山をば申すなりその邊の人はわかいしとぞ申しならひたる 山文字をばすてて申さず又筆の山ともなづけたり遠くて見れば筆に似てまろ/\と山 の嶺のさきのとがりたるやうなるを申しならはしたるなめり行道ところよりかまへて かきつき登りて嶺に參りたれば師にあはせおはしましたる所のしるしに塔をたておは しましたりけり塔の礎はかりなく大きなり高野の大塔ばかりなりける塔の跡と見ゆ苔 は深く埋みたれども石おほきにしてあらはに見ゆ筆の山と申す名につきて

ふでの山にかき登りても見つるかな苔の下なる岩のけしきを