University of Virginia Library

かへし 寂然

あはれさはかうやと君もおもひしれあき暮れがたの大原の里
ひとりすむおぼろの清水ともとてはつきをぞすます大原の里
炭がまのたなびくけぶりひとすぢにこゝろぼそきは大原の里
なにとなくつゆぞこぼるゝ秋の田のひたひきならす大原の里
水のおとはまくらにおつる心地してねざめがちなる大原の里
あだにふく草のいほりのあはれよりそでにつゆおく大原の里
山かぜにみねのさゝぐりはら/\とにはにおちしく大原の里
ますらをがつま木にあけびさしそへて暮るれば歸る大原の里
むぐらはふかどは木の葉にうづもれて人もさし來ぬ大原の里
もろともにあきも山路もふかければしかぞかなしき大原の里