University of Virginia Library

入道寂然大原に住み侍りけるに高野よりつかはしける

山ふかみさこそあらめときこえつゝおとあはれなる谷川の水
山ふかみ槇の葉わくる月影ははげしきもののすごきなりけり
山ふかみ窓のつれ%\といふものは色づきそむる櫨の立枝ぞ
山ふかみ苔のむしろのうへに居てなに心なく鳴くましらかな
山ふかみ岩にしたゝる水とめむかつ/\おつるとちひろふ程
山ふかみけぢかき鳥のおとはせでもの恐しきふくろふのこゑ
山ふかみこぐらき嶺の梢よりもの/\しくもわたるあらしか
山ふかみほだきるなりときこゑつゝ所にぎはふ斧のおとかな
山ふかみいりて見と見る物はみな哀もよほすけしきなるかな
山ふかみ馴るゝかせぎのけ近さに世に遠ざかる程ぞ知らるゝ