University of Virginia Library

雪の歌ども詠みけるに

何となくくるゝ雫のおとまでも山邊はゆきぞあはれなりける
雪ふれば野路も山路もうづもれて遠近しらぬたびのそらかな
あをね山苔のむしろの上にして雪はしとねのこゝちこそすれ
卯の花のこゝちこそすれ山里のかきねの柴をうづむしらゆき
をりならぬめぐりの垣の卯花をうれしく雪のさかせつるかな
とへな君ゆふぐれになる庭の雪をあとなきよりは哀ならまし