University of Virginia Library

鹿

しだり咲く萩の古枝にかぜかけてすがひ/\にを鹿なくなり
萩がえの露ためず吹くあきかぜにをじか鳴くなり宮城野の原
よもすがら妻こひかねて鳴く鹿の涙や野べのつゆとなるらむ
さらぬだに秋はもののみ悲しきを涙もよほすさをしかのこゑ
山おろしに鹿のねたぐふ夕暮をもの悲しとはいふにや有るらむ
しかもわぶ空の氣色もしぐるめり悲しかれともなれる秋かな
何となくすまゝほしくぞおもほゆる鹿の音たえぬ秋の山ざと