University of Virginia Library

月によせて思を述べけるに

世の中にうきをも知らですむ月の影は我が身の心地こそすれ
世の中は曇り果てぬる月なれやさりともと見し影も待たれず
厭ふ世も月すむ秋に成りぬればながらへずばと思ふなるかな
さらぬだにうかれてものを思ふ身の心をさそふあきの夜の月
捨てゝいにし憂世に月のすまであれなさらば心の留らざらまし
あながちに山にのみすむ心かなたれかは月のいるををしまぬ