University of Virginia Library

秋の夜のそらにいづてふ名のみして影ほのかなる夕月夜かな
あまの原月たけのぼる雲路をばわけても風のふきはらはなむ
うれしとや待つ人ごとに思ふらむ山の端いづる秋の夜のつき
なか/\に心つくすもくるしきにくもらばいりね秋の夜の月
いかばかり嬉しからまし秋の夜の月すむそらに雲なかりせば
はりま潟なだのみ沖にこぎ出でてあたり思はぬ月をながめむ
月すみてなぎたる海のおもてかな雲の波さへ立ちもかゝらで
いざよはで出づるは月の嬉しくて入る山の端はつらきなりけり
水の面にやどる月さへいりぬるは波のそこにも山やあるらむ
したはるゝ心や行くと山の端にしばしな入りそ秋の夜のつき
明くるまで宵より空に雲なくてまだこそかゝる月見ざりけれ
あさぢ原葉ずゑのつゆの玉ごとにひかりつらぬく秋の夜の月
秋の夜の月を雪かとながむれば露もあられのこゝちこそすれ