University of Virginia Library

人々秋の歌十首よみけるに

玉にぬく露はこぼれて武藏野のくさの葉むすぶあきのはつ風
穗に出でてしのの小薄まねく野にたはれてたてる女郎花かな
花をこそ野べの物とは見に來つれ暮るれば蟲の音をも聞きけり
荻の葉をふき過ぎて行く風のおとに心みだるゝ秋のゆふぐれ
晴れやらぬみ山の霧のたえ%\にほのかに鹿の聲きこゆなり
かねてより梢のいろを思ふかなしぐれはじむるみやまべの里
鹿の音を垣根にこめて聞くのみか月もすみけりあきの山ざと
庵もる月の影こそさびしけれ山田のひたのおとばかりして
わづかなる庭の小草のしらつゆをもとめてやどる秋の夜の月
何とかく心をさへはつくすらむわがなげきにて暮るゝ秋かな