University of Virginia Library

五月雨

水たゝふ入江の眞菰かりかねてむなでにすつる五月雨のころ
五月雨に水まさるらし字治橋やくもでにかゝるなみのしら絲
ござさしく古里小野の道のあとをまた澤になすさみだれの頃
つく%\と軒の雫をながめつゝ日をのみくらす五月雨のころ
五月雨は岩せくぬまな水ふかみわけし岩間のかよひ路もなし
東屋のをがやが軒のいと水に玉ぬきかくるさみだれのころ
五月雨に小田のさなへやいかならむあぜの泥土洗ひこされて
五月雨のころにしなれば荒小田に人にまかせぬ水たゝひけり