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小倉をすてゝ高野のふもとにあまのと申す山にすまれけりおなじ院の帥の局都の外のすみか訪ひ申さではいかがとてわけおはしたりけるありがたくなむかへるさに粉川へまゐられけるに御山よりいであひたりけるをしるべせよとありければぐし申して粉川へ參りたりけりかゝるついではいまはあるまじきことなり吹上見むといふ事具せられたりける人々申出でて吹上へおはしけり道より大雨風ふきて興なくなりにけりさりとてはとて吹上に行きつきたりけれども見所なきやうにて社にこしかきすゑておもふにも似ざりけり能因がなはしろ水にせきくだせと詠みていひつたへられたるものをと思ひて社にかきつけける
あまくだる名を吹上のかみならばくも晴れのきて光あらはせ
なはしろにせきくだされし天の川とむるもかみの心なるべし
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