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十七雑哥上
よみ人しらず
題しらず
ある人のいはく、この哥はさきのおほいまうち君の 也
なりひらの朝臣
めのおとうとをもて侍りける人に、うへのきぬをお くるとてよみてやりける
近院右のおほいまうちぎみ
大納言ふぢはらのくにつねの朝臣の、宰相より中納 言になりける時、そめぬうへのきぬあやをおくるとてよめる
ふるのいまみち
いそのかみのなむまつが宮づかへもせでいその神と いふ所にこもり侍りけるを、にはかにかうぶりたまはれりければ、よろこびいひつか はすとてよみてつかはしける
なりひらの朝臣
二条のきさきのまだ東宮のみやすんどころと申しけ る時に、おほはらのにまうでたまひける日よめる
よしみねのむねさだ
五節のまひひめを見てよめる
河原の左のおほいまうちぎみ
五せちのあしたにかむざしのたまのおちたりけるを 見て、たがならむととぶらひてよめる
としゆきの朝臣
寛平御時うへのさぶらひに侍りけるをのこども、か めをもたせてきさいの宮の御方におほみきのおろしときこえにたてまつりたりけるを、 くら人どもわらひて、かめをおまへにもていでてともかくもいはずなりにければ、つか ひのかへりきて、さなむありつるといひければ、くら人のなかにおくりける
けむげいほうし
女どもの見てわらひければよめる
きのとものり
方たがへに人の家にまかれりける時に、あるじのき ぬをきせたりけるを、あしたにかへすとてよみける
よみ人しらず
題しらず
なりひらの朝臣
きのつらゆき
月おもしろしとて凡河内躬恒がまうできたりけるに よめる
池に月の見えけるをよめる
よみ人しらず
題しらず
なりひらの朝臣
これたかのみこのかりしけるともにまかりて、やど りにかへりて夜ひとよさけをのみ、物がたりをしけるに、十一日の月もかくれなむとし けるをりに、みこゑひてうちへいりなむとしければよみ侍りける
あま敬信
田むらのみかどの御時に、斎院に侍りけるあきらけ いこのみこを、ははあやまちありといひて斎院をかへられむとしけるを、そのことやみ にければよめる
よみ人しらず
題しらず
又は、さくらあさのをふのしたくさおいぬれば
又は、おほとものみつのはまべに
このみつの哥は、昔ありけるみたりのおきなのよめ るとなむ
この哥は、ある人のいはく、おほとものくろぬしが 也
業平朝臣のははのみこ長岡にすみ侍りける時に、な りひら宮づかへすとて、時時もえまかりとぶらはず侍りければ、しはすばかりにははの みこのもとより、とみの事とてふみをもてまうできたり、あけて見ればことばはなくて ありけるうた
なりひらの朝臣
返し
在原むねやな
寛平御時きさいの宮の哥合のうた
としゆきの朝臣
おなじ御時のうへのさぶらひにてをのこどもにおほ みきたまひて、おほみあそびありけるついでにつかうまつれる
よみ人しらず
題しらず
この哥は、ある人のいはく、柿本人麿が也
藤原おきかぜ
よみ人しらず
藤原ただふさ
貫之がいづみのくにに侍りける時に、やまとよりこ えまうできてよみてつかはしける
つらゆき
返し
なにはにまかれりける時よめる
みぶのただみね
あひしれりける人の住吉にまうでけるによみてつか はしける
つらゆき
なにはへまかりける時、たみののしまにて雨にあひ てよめる
法皇にし河おはしましたりける日、つるすにたてり といふことを題にてよませたまひける
伊勢
中務のみこの家の池に舟をつくりておろしはじめて あそびける日、法皇御覧じにおはしましたりけり、ゆふさりつかたかへりおはしまさむ としけるをりによみてたてまつりける
真せいほうし
からことといふ所にてよめる
在原行平朝臣
ぬのびきのたきにてよめる
なりひらの朝諏
布引の滝の本にて人人あつまりて哥よみける時によ める
承均法師
よしののたきを見てよめる
神たい法し
題しらず
伊勢
竜門にまうでてたきのもとにてよめる
たちばなのながもり
朱雀院のみかどぬのびきのたき御覧ぜむとてふん月 のなぬかの日あはしましてありける時に、さぶらふ人人に哥よませたまひけるによめる
ただみね
ひえの山なるおとはのたきを見てよめる
みつね
おなじたきをよめる
三条の町
田むらの御時に女房のさぶらひにて御屏風のゑ御覧 じけるに、たきおちたりける所おもしろし、これを題にてうたよめとさぶらふ人におほ せられければよめる
つらゆき
屏風のゑなる花をよめる
坂上これのり
屏風のゑによみあはせてかきける
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