六月
(
ろくぐわつ
)
照
(
て
)
り
曇
(
くも
)
り
雨
(
あめ
)
もものかは。
辻々
(
つじ/\
)
の
祭
(
まつり
)
の
太鼓
(
たいこ
)
、わつしよい/\の
諸勢
(
もろぎほひ
)
、
山車
(
だし
)
は
宛然
(
さながら
)
藥玉
(
くすだま
)
の
纒
(
まとひ
)
を
振
(
ふ
)
る。
棧敷
(
さじき
)
の
欄干
(
らんかん
)
連
(
つらな
)
るや、
咲
(
さき
)
掛
(
かゝ
)
る
凌霄
(
のうぜん
)
の
紅
(
くれなゐ
)
は、
瀧夜叉姫
(
たきやしやひめ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
を
欺
(
あざむ
)
き、
紫陽花
(
あぢさゐ
)
の
淺葱
(
あさぎ
)
は
光圀
(
みつくに
)
の
襟
(
えり
)
に
擬
(
まが
)
ふ。
人
(
ひと
)
の
往來
(
ゆきき
)
も
躍
(
をど
)
るが
如
(
ごと
)
し。
酒
(
さけ
)
はさざんざ
松
(
まつ
)
の
風
(
かぜ
)
。
緑
(
みどり
)
いよ/\
濃
(
こまや
)
かにして、
夏木立
(
なつこだち
)
深
(
ふか
)
き
處
(
ところ
)
、
山
(
やま
)
幽
(
いう
)
に
里
(
さと
)
靜
(
しづか
)
に、
然
(
しか
)
も
今
(
いま
)
を
盛
(
さかり
)
の
女
(
をんな
)
、
白百合
(
しらゆり
)
の
花
(
はな
)
、
其
(
そ
)
の
膚
(
はだへ
)
の
蜜
(
みつ
)
を
洗
(
あら
)
へば、
清水
(
しみづ
)
に
髮
(
かみ
)
の
丈
(
たけ
)
長
(
なが
)
く、
眞珠
(
しんじゆ
)
の
流
(
ながれ
)
雫
(
しづく
)
して、
小鮎
(
こあゆ
)
の
簪
(
かんざし
)
、
宵月
(
よひづき
)
の
影
(
かげ
)
を
走
(
はし
)
る。