University of Virginia Library

十二月 じふにぐわつ

  大根 だいこん 時雨 しぐれ 干菜 ほしな かぜ とび からす せは しき そら を、 くも のまゝに つゝ けば、 霜林 さうりん 一寺 いちじ いだ きて みね しづか てるあり。 かね あれども かず、 きやう あれども そう なく、 しば あれども ひと ず、 師走 しはす まち はし りけむ。 こゑ あるはひとり かけひ にして、 いは きざ み、 いし けづ りて、 つめた えだ かげ ひか る。 がための しろ 珊瑚 さんご ぞ。あの やま えて、 たに えて、 はる きた きざはし なるべし。されば 水筋 みづすぢ ゆる むあたり、 水仙 すゐせん さむ く、 はな あたゝか かを りしか。 かり あとの 粟畑 あはばたけ 山鳥 やまどり 姿 すがた あらはに、 引棄 ひきす てし まめ から さら/\と るを れば、 一抹 いちまつ 紅塵 こうぢん 手鞠 てまり て、 かろ ちまた うへ べり。

大正九年一月―十二月