University of Virginia Library

清輔朝臣

あしねはふ うき身の程や つれもなく 思ひもしらず すぐしつゝ ありへける社  うれしけれ 世にも嵐の やまかげに たぐふ木葉の ゆくへなく 成なましかば まつが枝に 千世に一 だび 咲くはなの 稀なることに いかでかは 今日は近江に ありといふ くち木の杣に くちゐたる  谷のうもれ木 なにごとを 思ひいでにて くれたけの 末の世までも しられまし うらみを殘す こと はたゞ とわたる船の とりかぢの 取もあへねば 置くあみの しづみ思へる こともなく 木の下がく れ 行くみづの 淺きこゝろに まかせつゝ かき集めたる くちばには 由もあらぬに 伊勢の海の あ まのたく繩 ながき世に とゞめむことぞ やさしかるべき