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13. | 菟玖波集卷第十三
雜連歌二 |
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(Tsukubashu) | ||
13. 菟玖波集卷第十三
雜連歌二
關白左大臣
古の夢を見し人まろねして
救濟法師
歌人の夢の俤繪に書きて
從二位家隆
夜半の枕は夢もやどさず
前大納言爲家
なかなかに老の眠りはねやのうちに
藤原冬隆朝臣
寢覺には思ひ殘せることもなし
二品法親王
ともし火をしばしかかぐる風の前
導譽法師
關白報恩寺にて百韻連歌侍りけるに
子も丑も六時のうちに定まりて
藤原高秀
暗き夜や家のあたりも迷ふらん
善阿法師
水かくる筧の竹のよの程に
寂意法師
庭鳥の八聲のうちに夜は明けて
前大納言爲氏
曉のねざめの枕そばたてて
源頼章朝臣
鳥よりも先にや夢のさめぬらん
關白左大臣
文和五年三月、西芳精舍の百韻連歌に
忘れじな見しはその夜の夢の窓
明けぬよも月のまよひに鳥鳴きて
二品法親王
鐘のひびきに又鳥の聲
源高秀
山遠くいづくの鐘の聞ゆらん
詫阿上人
一聲の鳥より後もあけやらで
圓嘉法師
ぬるが中の夢にも身をや分かつらん
功阿法師
枕にめぐる山さとの雲
平時助
夢なればさむるも見るも心にて
善阿法師
覺めぬるも後には結ぶ夢なれば
木鎭法師
誰とても夢のまぎれの世の中に
平高基
心よりこそ夢は見えけれ
法印弘全
とにかくに昔の夢も又見えて
後光明照院前關白左大臣
夢をいくたびまた語るらむ
左近大將朝光
左右の大將おなじ車にて小野の山莊よりかへりける道にて
左近大將濟時
と侍るに
前大納言尊氏
よそより見ゆる峯の松原
久良親王
式部卿久明親王家の千句に
年へたる松の柱や朽ちぬらん
照阿上人
鐘聞きてなほ夜を殘す篠の屋に
關白前左大臣
山里は松をかげにてすむものを
救濟法師
我だにもすまれぬ山の柴の戸に
庵見えぬ煙は谷の木のまにて
導譽法師
遠山の雲にみゆるはまた隱れ
權律師玄祐
夕日隱れて山の端もなし
神業脩
薪つきては煙をも見ず
了阿法師
末細き煙に山の庵さびて
圓海法師
けぶりは富士の物とこそ見れ
藤原家尹朝臣
里にたく松の爪木の夕煙
源氏頼
山陰の庵には人の柴燒きて
救濟法師
とりはつる薪のねりそゆふつかた
良尋法師
拾ふ木を又燒くものとなすべきに
成阿法師
小野といふ里まで人の尋ねきて
圓懷法師
近き遠きも山や見ゆらん
頓阿法師
あらし吹く松を隣の峯の庵
丹波守長
山になほ夕日の影は見えながら
慶豪法師
山中の庵にかよふ道ありて
藤原貞直
暮れにけり里なき山の松の蔭
仁朝法師
いつもきく風は夕の庭の松
祝部行親
山風は浦なる松につたひきて
行阿法師
松原のあなたの里の夕煙
祝部尚長
古郷を山の庵にすみかへて
救濟法師
木の根よりいさごながるるみ山川
藤原知春
石高き山の奧より瀧おちて
顯英法師
村雲にところどころの山見えて
寂忍法師
音かすかなる軒の松風
關白前左大臣
山賤の竹のむしろに一夜ねて
道生法師
岩根なる苔のさ席敷きわびぬ
前大納言忠信
苔の石橋跡だにもなし
平堯重
杣木ひきまさきの綱に手をかけて
忠納言忠嗣
薪切るをやをのといふらん
常曉法師
山にとる薪の道の野に出でて
高階重成
ひとり住む柴の庵に夜はふけて
救濟法師
是よりも北なる國の名を聞けば
藤原長泰
笛の名のこまのわたりに家居して
藤原親政
野中の庵は松の下蔭
後深草院少將内侍
こし人知らぬ庭のよもぎふ
源家長朝臣
後鳥羽院御時、源氏卷の名國の名百韻連歌たてまつりける中に
蓬生の軒端あらそふ古郷に
救濟法師
茅ぶきの軒に音せぬ雨ふりて
藤原永郷
松風の音ばかりなる雨聽きて
藤原信實朝臣
淺茅原いつ住みけると見えぬかな
藤原秀能
淺茅原いつ住みけると見えぬかな
二品法親王
麻の中にも道ぞありける
權少僧都快宗
藥には草をも人のとるべきに
性遵法師
浮草のうき葉の上に水こえて
良阿法師
菱の浮葉ぞつのの上なる
前中納言定家
後鳥羽院の御時、三字中略、四字上下略の百韻連歌奉り侍りける中に
峯のいはやのあるじともなし
後鳥羽院御製
宮木引く正木の綱手うちはへて
詠み人知らず
竈山の麓の木にふるく書きつけて侍りけるに
藤原元輔
とあるに
救濟法師
風かはる春と秋との時を得て
周防内侍
堀河院の御時、中宮の御方に渡らせ給ふに、藏人永實して御所に侍りける桐火桶をめして遣はしたりけるに、繪かきたる火桶をさし出づとて
藤原永實
と侍るに
祝部行親
我もいでじと思ふ山陰
權中納言公雄
白雲のいく重高根を隔つらん
關白前左大臣
山陰は鐘よりさきの夕にて
前大僧正賢俊
山にあらず里にこそすめ
導譽法師
雲となる香の烟の一たきに
二品法親王
松風のたたくは柴の戸ぼそにて
前大納言公明
馴れてきく音さへさびし松の風
後宇多院御製
と侍るに
民部卿爲藤
と侍るに
信實朝臣
きてもなどたづねざるらん三輪の山
常盤井入道前太政大臣
宮木引く三輪の杣山尋ね來て
山階入道左大臣
山里は風のたよりに人待ちて
後鳥羽院御製
暮れかかる峯に日影のさすままに
左近少將善成
富士の根をかさねあげたる山と見て
關白前左大臣
松あれば風のかげなる柴の庵
導譽法師
古郷のあれしに似たる柴の庵
源兼義
落葉ふりたるまつの下庵
相阿法師
おくは鞍馬の峯の木がくれ
神貞嗣
むすべばかげの見ゆる山水
山階入道左大臣
我が庵の寂しき程をしらせばや
西園寺入道前太政大臣
むなしき跡を三輪の杉村
法印聽海
我が植ゑし松も老木の姿にて
善阿法師
吹く風も槇の木隱れ音こめて
救濟法師
陰にゐて休めばしばしねぶりの木
信照法師
雲に聞く深山の瀧のよるの波
關白前左大臣
花の頃報恩院にて百韻の連歌侍りしに
わづかなる柴のつま木の一拳
二品法親王
ひとり住む山の庵の窓の雨
前中納言定家
瀧のかずそふ玉ぞくだくる
善阿法師
すみ得ぬ人は山をいづなり
順覺法師
富士の根は人の語るもゆかしくて
西圓法師
あし引の山に臥す猪のよはに來て
二品法親王
柴の戸のあくるは晩く暮れ易し
常盤井入道前太政大臣
くれはふすべき庵むすばん
(Tsukubashu) | ||