University of Virginia Library

第七十二段

賤しげなるもの。居たるあたりに調度の多き。硯に筆の多き。持佛堂に佛の多き。前 栽に石、草木の多き。家の内に子孫の多き。人に逢ひて詞の多き。願文に作善多く書 きのせたる。

多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵。