University of Virginia Library

第二百四十二段

とこしなへに違順につかはるゝ事は、ひとへに苦樂のためなり。樂といふは、好み愛 する事なり。是を求むる事止む時なし。樂欲する所、一つには名なり。名に二種あり。 行跡と才藝との譽なり。二つには色欲、三つには味なり。萬の願ひ、此の三つにはし かず。是れ顛倒の相よりおこりて、若干のわづらひあり。求めざらんにはしかじ。