University of Virginia Library

第二百二十一段

「建治、弘安の比は、祭の日の放免のつけ物に、異樣なる紺の布四五反にて馬を作り て、尾髪にはとうしみをして、蜘蛛の絲かきたる水干につけて、歌の心などいひてわ たりし事、常に見及び侍りしなども、興ありてしたる心ちにてこそ侍りしか」と、老 いたる道志共の、今日も語り侍るなり。

此の比は、つけもの、年を送りて過差事の外になりて、萬の重き物を多くつけて、左 右の袖を人に持たせて、みづからはほこをだに持たず、息づき苦しむ有樣、いと見苦 し。