University of Virginia Library

鷹が峯に遊ひて樵夫の家にやどる

寒山に木を伐て乾鮭を烹る

ふぐ汁の亭主と見へて上座哉

鰒くへと乳母は育てぬうらみかな

妹が子は鰒くふ程になりにけり

鰒汁の君よ我等よ子期伯牙

河豚汁や五侯の家の戻足

鰒汁やおのれ等が夜は朧なる

鰒と汁鼎に伽羅を焚夜哉

雪の河豚鮟鱇の上にたゝんとす

鰒の贊先生文を揮はれたり

その昔鎌倉の海に鰒やなき

彌陀佛や鯨よる浦に立給ひ

突とめた鯨や眠る峯の月

既に得し鯨は迯て月ひとつ

山颪一二の[mori ]の幟かな

手取にやせんと乘り出す鯨舟

佐保川に鴨の毛捨るゆうべ哉

鴨遠く鍬そゝぐ水のうねり哉

をし鳥や鼬の覗く池古し

鴛や國師の沓も錦革

鴛や花の君子はかれてのち

鴛や池におとなき樫の雨

水鳥や提灯遠き西の京

水鳥を吹あつめたり山おろし

水鳥や朝めし早き小家がち

かぜ一陣水鳥白く見ゆるかな

水鳥やてうちんひとつ城を出る

水鳥や夕日江に入る垣のひま

水鳥や巨椋の舟に木綿うり

うかれ越せ鎌倉山を夕千鳥

渡し呼ぶ女の聲や小夜ちどり

湯あがりの舳先にたつや村千鳥

むら雨に音行違ふ千鳥かな