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几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ![]() |
芭蕉忌
時雨おとなくて苔にむかしをしのぶ哉
朔日のまことがましきしぐれかな
蓑蟲のふらと世にふる時雨哉
目前を昔に見する時雨哉
鷺ぬれて鶴に日のさすしぐれ哉
海棠の花は咲ずや夕時雨
夕時雨閾に蓑の雫かな
しぐるゝや長田が館の風呂時分
蓮枯て池あさましき時雨哉
半江の斜日片雲の時雨かな
物負フて堅田へ歸るしぐれ哉
時雨るや山かいけちて日の暮る
夕しぐれ車大工も來ぬ日哉
手にとらじとても時雨の古草鞋
下戸ならぬこそ宵/\のしぐれ哉
子を遣ふ狸もあらん小夜しぐれ
[sakabaya ]軒にとしふるしぐれ哉
窓の人のむかしがほなる時雨哉
木兎の頬に日のさす時雨哉
老が戀わすれんとすればしぐれかな
初雪や上京は人のよかりけり
大雪と成けり關のとざし時
焚火して鬼こもるらし夜の雪
いさり火の燒のこしけむ巖の雪
山里や雪にかしこき臼の音
念比な飛脚過行深雪かな
雨の時貧しき蓑の雪に富リ
雪折も聞えてくらき夜なる哉
雪國や粮たのもしき小家がち
雪の旦母屋のけぶりのめでたさよ
住吉の雪にぬかづく遊女哉
邯鄲の市に鰒見る雪の朝
樂書の壁をあはれむ今朝の雪
雪拂ふ八幡殿の内參
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