University of Virginia Library

太祇が一周忌に

魂かへれ初裏の月のあるじなら

魂祭王孫いまだ歸り來ず

徹書記のゆかりの宿や魂祭

――――に消殘りたる切籠哉

高燈籠總檢校の母の宿

銀閣に浪花の人や大文字

細腰の法師すゞろに踊かな

錦木の門をめぐりてをどり哉

あけかゝかる躍も秋のあはれ哉

攝待へよらで過行狂女哉

つと入や納戸の暖簾ゆかしさよ

二三軒つと入しゆく旅の人

故郷の座頭に逢ぬすまふ取

組あふて物打かたる地とりかな

よき角力出て來ぬ老の恨哉

夜角力の草にすだくや裸蟲

訪ひよりし角力うれしき端居哉

角力取つげの小櫛をかりの宿

花火見えて湊がましき家百戸

畠主のかゝし見舞て戻りけり

木曾どのゝ田に依然たるかゝしかな

人に似よと老の作れるかゝし哉

花鳥の彩色のこす案山子哉

笠とれて面目もなき案山子哉

家ありや煙のつとふ鳴子繩

ちかづきの鳴子ならして通りけり

あなくるし水つきんとす引板の音

ゆく秋の所/\やくだり簗

しか/\と主も訪來ずくだり簗

獺の月に啼音やくづれやな

稻かれば小草に秋の日のあたる

したゝかに稻になひゆく法師哉