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几菫著 (Haikushu [volume 1]) | ![]() |
法師ほどうらやましからぬものはあらじ、人には木のはしのやうにおもはれてとはこゝろえぬ兼好のすさびならずや
自剃して凉とる木のはし居哉
我影を淺瀬に踏てすゞみかな
似た僧のしばしとてこそ夕凉
床凉笠置連哥のもどりかな
見失ふ鵜の出所やはなの先
朝かぜのふきさましたる鵜川哉
射干して囁く近江やわたかな
葉を落て火串に蛭の焦る音
宿近く火串もふけぬ雨のひま
兄弟のさつお中よきほぐしかな
山おろし早苗を撫て行衞哉
けふはとて娵も出たつ田植哉
午の貝田うた音なく成にけり
おそを打し翁も誘ふ田うへかな
雨ほろ/\曾我中村の田植哉
早乙女やつげのおくしはさゝで來し
麥刈て瓜の花まつ小家哉
麥刈て遠山見せよ窓の前
麻を刈レと夕日このごろ斜なる
あふみ路や麻刈あめの晴間哉
酒を煮る家の女房ちよとほれた
葛水や鏡に息のかゝる時
葛水に見る影もなき翁かな
葛水や入江の御所にまふずれば
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