University of Virginia Library

延寶之句法

餅舊苔の[kabi ]を削れば風新柳のけづりかけ

關の戸の火鉢ちいさき餘寒哉

おそき日や谺聞ゆる京の隅

くれかぬる日や山鳥のおとしざし

遲き日や都の春を出てもどる

等閑に香たく春の夕かな

燭の火を燭にうつすや春の夕

日くれ/\春や昔のおもひ哉

癖のある馬おもしろし春の暮

うかぶ瀬に沓ならべけり春のくれ

大門のおもき扉や春のくれ

居風呂に棒の師匠や春のくれ

蛤にたゝれぬ鴫や春の暮

春のよやたらいを捨る町はづれ

春の夜や狐の誘ふ上童

ゆく春やおもたき琵琶の抱ごゝろ

寢佛をきざみ仕舞ば春くれぬ

春のくれ筑紫の人とわかれけり

ゆく春や眼に逢ぬめがねうしなひぬ

行春のいづち去けんかゝり舟

行春の尻べた拂ふ落花哉

ゆく春や歌も聞へず宇佐の宮

手燭して庭踏人や春おしむ