University of Virginia Library

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わびしげに見ゆるもの

六七月の午未の時ばかりに、穢げなる車にえせ牛かけて、ゆるがし行くもの。雨ふらぬ日はりむしろしたる車。降る日はりむしろせぬも。年老いたる乞兒。いと寒きをりも、暑きにも、下種女のなりあしきが子を負ひたる。ちひさき板屋の黒うきたなげなるが、雨にぬれたる。雨のいたく降る日、ちひさき馬に乘りて前駈したる人の、かうぶりもひしげ、袍も下襲もひとつになりたる、いかにわびしからんと見えたり。夏はされどよし。