University of Virginia Library

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こころづきなきもの

祭、御禊など、すべて男の見る物見車に、ただ一人乘りて見る人こそあれ。いかなる人にかあらん。やんごとながらずとも、わかき男どもの物ゆかしと思ひたるなど、引きのせて見よかし。すきかげに唯一人かがよひて、心ひとつにまもり居たらんよ、いかばかり心せばく、けにくきならんとぞ覺ゆる。物へもいき、寺へもまうづる日の雨。つかふ人などの、「我をばおぼさず、某こそ只今時の人」などいふをほのききたる。人よりは少しにくしと思ふ人の、おしはかりごとうちし、すずろなる物怨し、われさかしがる。