University of Virginia Library

雁鴨はわれを見捨てて去りにけり豆腐に羽根のなきぞうれしき
見ればをしおよべば高しはこ柿をたごめてたもれ丈高の殿
一度さへやせたる殿を山蜘が絲引きかけて天へまひあがる
大空のかほのごとある君なれば來るとはすれど目には見ずけり
一度さへ心にかかるとちうの町双六碁盤からりころり
草むらの螢とならば宵々に黄金の水を妹たまうてよ
身がやけて夜は螢とほとれども晝は何ともないとこそすれ
我れだにもまだ食ひたらぬ白粥のそこにも見ゆる影法師かな
蚤虱ねに鳴く秋の蟲ならば我が懷はむさしののはら
きぬ%\の東しらみにかくはしは我がふる布の虱なりけり
理や佛の種を茄子にかへば其の色さへも瑠璃にてあれば
天竺の涅槃の像と良寛と枕ならべに相寢たるかも
極樂の蓮の花の花びらを我れに供養す君が神通
いざさらばはちすの上にうちのらんよしやかはづと人はいふとも
山伏の峰かけ衣何と染めんゆかたすそゆき袖はくれなゐ
良寛僧が今朝のあさは菜もてにぐる御姿後の世まで殘らん
良寛が花持てにぐるお姿はいつの世までも殘りけるかな
彌彦山おろちが池のね藤こそ越後でおひて佐渡で花咲く
今日の日の黄金にまさる朝日樣八重立つ雲は別れて照らしやる
朝霧に乘り出す駒はこまも駒あしげも駒にたづなゆら/\
夕立に降りこめられしくされ儒者ひたる君子と誰れか言ふらん
大方の世をむつまじくわたりなば十に一つも不足なからん
小正月いはふ小松の七五三丑につけこむ十分の福
うちはとてあまり丸きは見よからず扇のかどを少し加へて