University of Virginia Library

都良子が死にけりと人のいひければ(七首)

秋の川や立田の山のもみぢ葉の散るとし聞けば風ぞ身にしむ
殘りなく散り行くものを紅葉ばの色づかぬ間を頼むばかりぞ
山風は時し知らねばもみぢばの色づかぬ間を何かたのまん
いと早く散れる紅葉におどろきて我が身の秋は思はざりけり
おそしとし何かわかたんうつせみのありてなき世と思ひ知らずや
ありてなき世とは知るともうつせみの生きとしものは死ぬるなり けり
秋の夕べ蟲音を聞きに僧ひとりをち方里は霧にうづまる