University of Virginia Library

夢ならばさめても見まし萩の花今日の一日は散らずやあらなん
我が園に咲きみだれたる萩の花朝な夕なにうつろひにけり
我が宿の秋萩の花咲きにけり尾の上の鹿は今か鳴くらん
おく露に心はなきを紅葉ばのうすきも濃きもおのがまに/\
緑なる一つ若葉と春は見し秋はいろ/\にもみぢけるかも
紅葉ばは散りはするとも谷川に影だに殘せ秋のかたみに
あしびきの山のたをりの紅葉ばを手折りてぞこし雨の晴れ間に
あしびきの山のたをりの紅葉ばを手折らずに來て今はくやしき
秋山を我が越え來ればたまぼこの道も照るまで紅葉しにけり
おく山の紅葉ふみわけこと更に來ませる君をいかにとかせん
我が宿をたづねて來ませあしびきの山の紅葉を手折りがてらに
我が園のかたへの紅葉誰れ待つと色さへ染まず霜はおけども
露霜にやしほ染めたる紅葉ばを折りてけるかも君まちがてに
音にきく樋曾の山べの紅葉見に今年はゆかん老のなごりに
紅葉ばの降りに降りしく宿なれば訪ひ來ん人も道まどふらし
もみぢばのちらまくをしみあしびきの木の下ごとに立ちつつもと な
もみぢ葉のさきを爭ふ世の中に何をうしとて袖ぬらすらん
うちつけに散りなば惜しき紅葉ばを見つゝしのばん秋のかたみに
あしびきの山の紅葉をかざしつつ遊ぶ今宵は百夜つぎたせ
ひさがたの時雨の雨の間なく降れば峰の紅葉は散りすぎにけり
あしびきの山の紅葉ば散りすぎてうら淋しくもなりにけるかな
十日あまり早くありせばあしびきの山のもみぢを見せましものを
もみぢばの散りにし人のおもかげを忘れで君がとふぞうれしき
今よりはつぎて木々の葉色づかんたづさへて來よ一人二人を
秋山のもみぢ見がてら我が宿をとひにし人はおとづれもなし
もみぢ葉の散る山里はきゝわかぬ時雨する日もしぐれせぬ日も
木の葉散る森の下屋は聞きわかぬ時雨する日もしぐれせぬ日も
秋山の紅葉はすぎぬ今よりは何によそへて君をしのばん
秋山の紅葉は散りぬ家づとに子等がこひせばなにをしてまし
山奥に見捨ててかへるうす紅葉我れを思はんあさき心を
やり水のこの頃音の聲せぬは山の紅葉の散りつもるらし
我が宿のまがきに植ゑし蔦かづら今日この頃は紅葉しぬらし