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万葉集 (Manyoshu) | ||
挽歌
1404
[題詞]挽歌
[原文]鏡成 吾見之君乎 阿婆乃野之 花橘之 珠尓拾都
[訓読]鏡なす我が見し君を阿婆の野の花橘の玉に拾ひつ
[仮名],かがみなす,わがみしきみを,あばののの,はなたちばなの,たまにひりひつ
1405
[題詞]
[原文]蜻野S 人之懸者 朝蒔 君之所思而 嗟齒不病
[訓読]秋津野を人の懸くれば朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず
[仮名],あきづのを,ひとのかくれば,あさまきし,きみがおもほえて,なげきはやまず
1406
[題詞]
[原文]秋津野尓 朝居雲之 失去者 前裳今裳 無人所念
[訓読]秋津野に朝居る雲の失せゆけば昨日も今日もなき人思ほゆ
[仮名],あきづのに,あさゐるくもの,うせゆけば,きのふもけふも,なきひとおもほゆ
1407
[題詞]
[原文]隠口乃 泊瀬山尓 霞立 棚引雲者 妹尓鴨在武
[訓読]隠口の泊瀬の山に霞立ちたなびく雲は妹にかもあらむ
[仮名],こもりくの,はつせのやまに,かすみたち,たなびくくもは,いもにかもあらむ
1408
[題詞]
[原文]狂語香 逆言哉 隠口乃 泊瀬山尓 廬為云
[訓読]たはことかおよづれことかこもりくの泊瀬の山に廬りせりといふ
[仮名],たはことか,およづれことか,こもりくの,はつせのやまに,いほりせりといふ
1409
[題詞]
[原文]秋山 黄葉A怜 浦觸而 入西妹者 待不来
[訓読]秋山の黄葉あはれとうらぶれて入りにし妹は待てど来まさず
[仮名],あきやまの,もみちあはれと,うらぶれて,いりにしいもは,まてどきまさず
1410
[題詞]
[原文]世間者 信二代者 不徃有之 過妹尓 不相念者
[訓読]世間はまこと二代はゆかざらし過ぎにし妹に逢はなく思へば
[仮名],よのなかは,まことふたよは,ゆかざらし,すぎにしいもに,あはなくおもへば
1411
[題詞]
[原文]福 何有人香 黒髪之 白成左右 妹之音乎聞
[訓読]幸はひのいかなる人か黒髪の白くなるまで妹が声を聞く
[仮名],さきはひの,いかなるひとか,くろかみの,しろくなるまで,いもがこゑをきく
1412
[題詞]
[原文]吾背子乎 何處行目跡 辟竹之 背向尓宿之久 今思悔裳
[訓読]我が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに寝しく今し悔しも
[仮名],わがせこを,いづちゆかめと,さきたけの,そがひにねしく,いましくやしも
1413
[題詞]
[原文]庭津鳥 <可>鷄乃垂尾乃 乱尾乃 長心毛 不所念鴨
[訓読]庭つ鳥鶏の垂り尾の乱れ尾の長き心も思ほえぬかも
[仮名],にはつとり,かけのたりをの,みだれをの,ながきこころも,おもほえぬかも
1414
[題詞]
[原文]薦枕 相巻之兒毛 在者社 夜乃深良久毛 吾惜責
[訓読]薦枕相枕きし子もあらばこそ夜の更くらくも我が惜しみせめ
[仮名],こもまくら,あひまきしこも,あらばこそ,よのふくらくも,わがをしみせめ
1415
[題詞]
[原文]玉梓能 妹者珠氈 足氷木乃 清山邊 蒔散<と>
[訓読]玉梓の妹は玉かもあしひきの清き山辺に撒けば散りぬる
[仮名],たまづさの,いもはたまかも,あしひきの,きよきやまへに,まけばちりぬる
1416
[題詞]或本歌曰
[原文]玉梓之 妹者花可毛 足日木乃 此山影尓 麻氣者失留
[訓読]玉梓の妹は花かもあしひきのこの山蔭に撒けば失せぬる
[仮名],たまづさの,いもははなかも,あしひきの,このやまかげに,まけばうせぬる
1417
[題詞]羈旅歌
[原文]名兒乃海乎 朝榜来者 海中尓 鹿子曽鳴成 A怜其水手
[訓読]名児の海を朝漕ぎ来れば海中に鹿子ぞ鳴くなるあはれその鹿子
[仮名],なこのうみを,あさこぎくれば,わたなかに,かこぞなくなる,あはれそのかこ
万葉集 (Manyoshu) | ||